「キャラクターに寄り添える隙間がなかった」プアン 友だちと呼ばせて つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクターに寄り添える隙間がなかった
本作と同じ監督が務める「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」は、スタイリッシュな映像やトリックじみた狙いすました演出で、スリリングさの創出に大いに貢献し、作品を面白くしている。
「バッド・ジーニアス」はサスペンス系の作品なので、それがどハマリした。
では本作はどうだろう。どちらかといえばしっとり系の作品で、バズ・プーンピリヤ監督が「バッド・ジーニアス」で施した演出は相性が悪いように思える。しかし、やった。
いくつかのミスリードを誘う仕掛けや、ショットの良さはあったけれど、それが作品を面白くしたかというと、そこまで効いてないように感じる。
どちらかといえばキャラクターの掘り下げを阻害したようにすら感じてしまった。
死期が近いとしても暗くなりすぎず、そこそこ笑えるし、いい感じにしっとりもしている。明白に「ここがダメ」というところはなかったものの、脚本か演出で、もう一押しなんとかならんかったのかと思ってしまうのだ。
物語がしんみりしてくると演出も大人しくなっていく。それは間違ってないだろうが、スタイリッシュだったときとのギャップで、つまらない演出に見えてしまうんだな。
結果、得られるべきエモーションを得られず、フラットな気持ちのまま終わってしまったように感じた。
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