#マンホール : 特集
結婚前夜に穴に落ちた…SNSに助けを求め脱出しろ!
「サーチ」「ギルティ」級の“限定スリラー”の傑作、
誕生――驚きの結末にぶっ飛ぶ、ネタバレ厳禁映画!
翌日に結婚式を控えた男。営業成績No.1で人望も厚い彼は、会社の同僚たちが開いてくれたサプライズ・パーティーの帰り道、あろうことかマンホールに落ちてしまう。
ハシゴは途中で折れており地上に上がることができない。スマホで助けを呼ぶが、GPSが狂っていて自分の居場所は不明。やがて、“誤って落ちた”のではなく、“誰かに落とされた”という疑いが頭をもたげてくる……。
男はSNSを開きアカウントを作成。「助けてください #マンホールに落ちた」とつぶやく――。
2月10日から公開される「#マンホール」は、映画.com編集部が実際に鑑賞し、「なんとしても映画ファンの皆さんにおすすめしたい」と大興奮した秀逸作だ。
設定の面白さがバツグンで、その物語展開は「search サーチ」「THE GUILTY ギルティ」などを彷彿させるほどスリリング。完成度が極めて高く、新たな“限定スリラーの傑作”が誕生したと声を限りに叫びたくなった。
本特集では、そんなネタバレ超厳禁の「#マンホール」の魅力を、[ネタバレなし]のレビュー形式でお伝えしていく。物語と予告編を見て、「面白そうだな」と感じたあなたは、ぜひ映画館へ!
※今作は第73回ベルリン国際映画祭(現地時間2月16~26日に開催)のベルリナーレ・スペシャル部門に正式招待! 主演の中島裕翔、監督の熊切和嘉も現地入りする予定。
●最初に結論:観てよかった…! 映画.com編集部が熱烈にオススメする必見作
仕事柄、古今東西のさまざまな映画を観てきているが、今作には「むちゃくちゃ面白い日本映画、見つけた!」と目玉が飛び出た。この展開と結末の衝撃を、ネタバレを食らわずにストレートに体感できたことがなんと幸福か、とたまらなくなった。
映画をよく観る人、あまり観ない人関係なしに、おそらく全ての人がのめり込んで楽しめるはず。それくらい“貫通力”に満ちた必見作だとも言える。
では、なにがどう優れているのか? いくつかの要素にわけて、具体的に解説していこう。
●物語の【アイデア】が最高…この秀逸ぶりは「サーチ」「ギルティ」に匹敵する!
結婚式前夜にサプライズ・パーティーがあり、事件発生。今作は、秀逸なアイデアが世界中で称賛された「ハングオーバー!」シリーズを彷彿させるようなスタートを切る。
主人公は結婚式に間に合うよう脱出しなければならないが、地上につながるハシゴは崩壊し、脚に深々と裂傷を負い自力での脱出は不可能。スマホの地図アプリが示す座標を警察や知人に送るが、探しにきた知人から「そこにマンホールなんてない」と言われてしまう。
自分がどこにいるかもわからない。持っているのはスマホ(幸いにもほぼフル充電)、高級ライター、文房具類のみ。このままでは結婚式どころか、誰にも気づかれないまま死を迎えることに……。
特筆すべきは、今作はほぼマンホールのなかのみで進行する点。描かれる状況は「ここからどうなる!?」という期待感にあふれまくっており、アイデアの斬新さは父親が行方不明の娘を探す様子が、PCやスマホの画面のみで描かれる「search サーチ」や、電話から聞こえる声と音だけで誘拐事件を解決する「THE GUILTY ギルティ」などの傑作シチュエーション・スリラーに匹敵する。
で、物語が独創的なのはわかった。重要なのはここから先の“展開”だ。物語展開がしょうもなければ、いくらアイデアが良かろうが台無し。しかし今作は、面白さを損なわないどころか“倍増させている”からすごい!
●物語の【展開】に唸る…SNSに助けを求める → 特定班が居場所を“推理”し急転!
思わず膝を打ったのが、主人公がTwitterのようなSNSアプリを開く場面。若い女性のふりをしたアカウント“マンホール女”を作成し、SNSユーザーに助けを求める――!
投稿は瞬く間に拡散され、日本中の暇人たちが集まる“祭り”状態に。やがてユーザーたちが「なにか手がかりは?」「画像に写っている看板を鮮明化してみた」「地名の二文字目に“さんずい”を使う場所は、ここと、ここと」など、独自に捜索を開始する。
この加速度的に主人公の居場所が特定されていく過程が、ライブ感とスリル満点で素晴らしく面白い! ここまでスマホ時代の特徴――“ネットとリアルの狭間”を半信半疑ながら楽しむ心理など――を魅力的に利用した作品は、世界的に見ても稀ではないだろうか。
さらにガス漏れや波の花の出現など、2分に1度の頻度で何らかのイベントが起きる! 次々と「そうくるか!」が押し寄せてきて、1秒たりとも飽きることがなくエンドロールに突入した。……ここまで、観終わったテンションそのままに書き殴ってきたが、少々冷静になるとなんだか褒めすぎている気がしないでもない。がしかし、これは本音中の本音のレビューだ。今作を体験しなければ絶対に損!
●6年ぶり映画主演、中島裕翔の【怪演】に驚かされる…好青年が次第に狂気に駆られていく
「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔は行定勲監督作「ピンクとグレー」などの芝居をみれば、その力量に疑いはなかった。が、およそ6年ぶりの映画主演となる今作の演技には脅かされた。ほぼ1人芝居で、もう怪演に次ぐ怪演だったのだ!
ハイスペックイケメンが汚いマンホールに落ち、焦りとストレスでどんどんおかしくなっていく。叫び、怒り、笑い、泣き、青ざめ、安堵し、絶望し、やがて……。もぐらたたきのように出ては引っ込む“極限状況の感情”を、技術というよりは気持ちで体現。今作のサプライズのなかでも最高クラスの“想像を超える”クオリティを発揮しており、次はどんな表情(かお)をみせてくれる?と、中島の存在感にのめり込んでいくのだ。
なかでも壮絶だったのは、「傷口をふさぐ場面」。これは実際に映画館で観てもらいたい。かの名作「ランボー」を参考にしたという同シーンは、多くの観客が手に汗握り、生唾を飲み込み、釘付けになること間違いなし!
●スタッフの【仕事人】ぶりが素晴らしい…熊切和嘉監督ら、限界突破の完成度に大拍手!
作品を創出したスタッフの名を見れば、このクオリティは納得だ。
監督は国際的に評価の高い熊切和嘉。「私の男」「海炭市叙景」などで知られ、緊張感のある日常描写で、人間の内面をあぶり出す名手だ。
さらに脚本は、岡田道尚氏。「ライアーゲーム」シリーズ、「マスカレード・ホテル」シリーズを手掛け、あっと驚くトリックで観客を楽しませることに長けている同氏が、野心的なオリジナル脚本を創出した。
日本を代表する仕事人たちが、その才能をフルに投入し、日本ではあまり製作されてこなかったシチュエーション・スリラーに挑戦。世界に向け「メメント」や「search サーチ」「THE GUILTY ギルティ」のような作品を送り出す目標を掲げ、結果、ここまでの“傑作”を生み出してみせたことは、諸手を挙げて称賛すべきだろう。
ちなみに、オリバー・ストーン監督作「Uターン」を彷彿させるシーンなどもあり、映画ファン垂涎の要素も満載。画面の端々に潜むオマージュを見つける楽しみもあるため、何度も何度も観たい一作である。
●衝撃的すぎる【結末】…ネタバレは絶対にできない、だからこそ観てほしい!
最後に、やはり結末については触れておきたい。もちろんネタバレは超厳禁なので、具体的には何も言えないが、これだけはお伝えする。観れば高確率で“ぶっ飛ぶ”はずだ。
事実、筆者は予想を遥かに超えられ、後頭部から全身にかけてブワッと鳥肌がたった。その感覚は例えば「シックス・センス」の衝撃(注:同作のような結末ではない)や、「十角館の殺人」などの傑作ミステリー小説を読んだ後のような満足感にとてもよく似ていた。
繰り返しになるが、この衝撃は映画をよく観る人はもちろん、あまり観ない人も関係なしに“やられる”はず。日々がいくらかつらいとき、映画を観て、そのつらさを一時でも忘れられるとするならば、今作はうってつけだと思う。
だからこそ、映画.comは「この記事を読んだ、可能な限り多くの人に、今作を絶対に観てもらいたい」と強く願っている。