劇場公開日 2023年7月7日

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「あまりにも突っ込みどころが多すぎるが、どこまで気にするかは個々人次第か…?」1秒先の彼 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あまりにも突っ込みどころが多すぎるが、どこまで気にするかは個々人次第か…?

2023年7月8日
PCから投稿

今年229本目(合計880本目/今月(2023年7月度)15本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。

 ※ 公式サイトさん、「最後まで行く」もそうですが、海外リメイク(日本リメイク)などでタイトルが同じになる場合、どちらの作品のことなのか明確になるように工夫してほしいです(一定数混乱が生じそう)。

 4本見た中では最後の作品で、チョイスした選択肢の中では「うーむ」というところです。
そういえば、明日、「先生!口裂け女です」を予約しているのですが、ここでは評価がボコボコにされていて、こりゃ大丈夫なんかいな…と心配している私です。

 結局のところ、私もシネマートで見ましたが、原作映画があり、台湾(便宜上の国扱い。以下もすべて同じ)映画のそれを下敷きにしているため、あることないこと描けない一方で、日本リメイク版独自の展開もあります。この点、原作映画を見ていればある程度有利ですが、日本リメイク版独自の展開もあれば、「映画内でのルール」(主人公を誰に取るかは微妙だが、異なる視点からの描写タイプ。最近だと「怪物」等が該当)はそうそう最初に示されるので、そこはあまり気にならないところです。

 国は違うとはいえ、日台ともに文化圏が似る事情もあるので、リメイク版独自の展開はあるものの理解に大きな支障をきたすことは(原作版を見ていなくても)ないものの、法律系資格持ちからすると、???な展開はかなりあり(原作版にはない。なお、台湾は統治時代の関係で、民法等は日本民法のそれをかなり参考にして作られているので、解釈が同じになることが多いです。韓国も同様)、「なんでこうなった?」「魔改造しすぎ」という点に大半行きつくんじゃなかろうか…という気がします。

 ただそれは、決して多くはない法律系資格持ち(行政書士資格持ち)という、決して多くはなかろうという一種の「特殊な属性」からのレビュー感覚であり、やることすること無茶苦茶ではないので(各種の法規を知っていると変な展開になる点は否めないという程度)、どうするかは微妙です。

 幸いにも、「誰の目にみても明らかにおかしい」点はなく、「資格持ちは一瞬で見抜いてくる論点の拾い漏れ」というものであり、まぁ「個人的には」かなり気にしましたが(以下の通り)、そこはどうとるかは個人差はバラバラな気がします。特に今週は「交換日記」か「バイオハザード」かという2択な様相で、この映画がどこまで伸ばせるか(7月2週はインド映画が3本もあるとか無理ぽ日程…)は日曜日次第なのかな、とも思えます。

 評価は以下を参考にしたもので、3.8を4.0まで切り上げたものです。

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 (減点0.3/事務管理と無権代理、事務管理の管理者の責任)

 事務管理の管理者にあらゆる代理権が与えられているのではなく、対外的に本人の名で法律行為をしてもそれは(表見代理を満たさないなら)無権代理を問われます。かつ、本人の意に沿わない事務管理の費用請求権は「本人が現に利益を受ける範囲」に縮小されます。

 また、管理者は、本人や相続人等が事務管理を始められるようになるまで事務管理を継続する義務があります(民法700条)。事務管理にかかわっていながら「仕事だから」という理由で抜けるのはまずい描写です。

 ※ このことは、例えば交通事故などで「そもそも救助義務者がいる場合」にも適用はされます(事務管理に関与した以上、勝手に離脱することはできない)。

 ※ もっとも、事務管理は費用は請求できても報酬は請求できない(個別法で修正あり。遺失物法)ため、「面倒なことに巻き込まれる割にメリットが少ない」というある種欠陥を抱えている(学説上の解釈の対立も大きい)のも事実です。

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 (減点0.3/道路運送法の解釈)

 バスにおいて、乗り場以外で降りたり乗ったりすることはできません(同法16条)。また、勝手に届け出した以外の範囲(地理的範囲)にバスを走らせることはできません(同20条。高速バスと変わらなくなるため)。

 この部分はどう見ても突っ込み幅が大きく(マイナーな行政法規ではあるものの、特に後者は常識扱い)、どうなっているんだか、というところです。
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 (減点0.3/自転車の無断利用と占有訴権)

 自転車を無断利用する行為が占有訴権の観点で問題になることは、もはや言うまでもありません(民法200条、202条)。
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 (減点0.3/地元(京都)ネタに移した割にそこそこの地理を要求してくる)

 天橋立、宇治に関しては一般常識扱いされると思いますが、亀岡まで出してくる(しかも地名の言及のみで具体的な場所の描写はここだけはなぜか存在しない)のはどうなのか…というところです(関西圏に在住していても、そこまで知っている方はいない)。

 ※ いくつか海・川が出てくるところもすべて天橋立で、保津峡ではない模様。

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 …というより、「事務管理と無権代理」の話、何度も書いているんですけどね…。
まぁ、事務管理で無権代理となる状況が発生しても(本人の名を勝手に使用すると(表見代理の条件を満たさないなら)無権代理になる、というのが最高裁判例)、本人の追認があればさかのぼって有効になるし、この論点を厳密につつくと大半の映画の描写にいちいち気を付けなければいけないし、難しいところではあります(ただ、トラブルになることもあるのは事実。特に今回の映画の描写の場合、無権代理の論点より、「管理者が勝手に「仕事に行くから」で抜けている」点のほうが減点幅はウェイトは大きいです)。

 ※ 急病人などを発見した場合、一般市民が救急車を呼ぶなども事務管理の範囲ですが、そのとき「到着するまでそこにいてください」と指示されるのも、このためです(最低限の聞き取り調査は行わなければならないため)。

yukispica