帰れない山のレビュー・感想・評価
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【”山の民として生きる。”雄大なヨーロッパアルプスの山脈を背景に、都会育ちの少年と牛飼いの少年の交流を描いた作品。父との齟齬、酪農家の経済的苦境を絡め、生と死を様々な角度で描いた作品でもある。】
■北イタリアのトリノに住むピエトロはある夏休みに、山を愛する父と母と共に山麓の村で過ごす。村は道路開通により寂れてはいたが、同じ年の野性味あふれるブルーノと出会い、仲良くなる。
その後、二人は都会と山裾の村に住む二人は疎遠になるが、ピエトロの父の死をきっかけに30歳を過ぎて再会し、父の望みであった”山の家”を共に建てる事になる。
◆感想
・序盤の、ピエトロとブルーノがピエトロの父に連れられてアルプスに登るシーンから、カメラが捉える山脈の美しさに圧倒される。
更に、危険な雪渓のクレヴァスを乗り越えるシーンもハラハラしながら鑑賞。
ー 明らかに高山病に罹っているピエトロのフラフラと歩く姿。お父さん!山のリーダーはメンバーの体調に留意しないといけないよ!
そして、それが切っ掛けで、ピエトロは青年になっても、父からの誘いを拒否し、山には登らなくなってしまうのである。-
・ピエトロと父の確執。ブルーノと父の劇中では描かれない確執。そして、ピエトロの父は突然亡くなる。
ー それまで、定職にも付かず生きて来たピエトロは、久しぶりにブルーノと会い、自らの父がブルーノに託していた”山の家”を共に建てる事になる。
更に、ブルーノが屡々、父に色々と相談していた事も知るのである。
そして、ブルーノは職人として生き方を決めている事も知るのである。-
■二人が、夏場に眺めの良い斜面に石造りの”山の家”を作るシーンは楽しい。そして、且つて二人が遊んだ山中の湖を”こんなに小さかったか?”と言いながら泳ぐシーンも素敵である。
そして、ピエトロの友人達が”山の家”に来た時に話題となる”鳥葬”の件。
・ピエトロが自分の生き方を模索するために、頻繁にヒマラヤ山脈の麓の村を訪れるシーンも個人的に楽しい。お金の無い中、ヒマラヤ山脈には時折出かけていたからである。貧しくとも表情豊かなネパールの民。
・そして、ピエトロはブルーノに促され、独りアルプスの山々を歩く。そして頂にある金属箱のメモ帳の中に記された父の言葉を読み取るのである。
ー 少し、沁みる。普段は厳しい都会での仕事をこなしながら父の唯一の愉しみは登山だったのである。-
・一方、ブルーノも拘りチーズ製造を始め、順調に生活が進んでいると思ったが・・。妻になったラーラとの資金繰りについて口論するシーン。
ー 日本でもそうだが、山の暮らしは経済的には厳しいらしい。一時期、田舎移住が流行った事があるが、殆どの人が挫折した、と南アルプスの小屋番の方から聞いたことが有る。自然の厳しさもその一つであろう。-
・ラーラと娘を麓のピエトロの母に預け、独りで山中で生活するブルーノ。だが、大雪が降った際に駆け付けたレスキュー隊が小屋に入るも彼の姿はない。
ー ブルーノは独りで、山に抱かれたのであろう。そして雪が解けた時には、望んだ”鳥葬”されるのであろう。ー
<今作は、対照的な少年二人の友情と成長を基に、父との齟齬、自然と酪農家の生活、生と死をテーマを様々な角度から描いた作品なのである。>
スタンダードサイズ
ゴールデン・ウィーク中日(なかび)の新宿ピカデリー午前中回、少し遅れで開場時間の5分過ぎに着いた時のロビーはそれほど混んでいなかったものの、それは単純に番組のタイミングだったのかもしれません。基本、チケットは割と早めにオンラインで買う私ですが、本作、公開館数が少ないとはいえ意外な客入りに若干驚きました。由来の通りの「黄金週間」、いよいよ映画館にも本格的にお客さんが戻ってきたのかもしれません。
さて本作ですが、イタリアの作家パオロ・コニェッティの自伝的小説の映画化であり、脚本もいい意味で小説っぽさを残しています。語られていることは「人生」であって、言ってみれば日常(生活)の連続で特別なわけではありません。しかしながら雄大な山々を相手に躍動的に遊ぶピエトロ(ペリオ)とブルーノの少年時代。(ピエトロの)父の死を機に再会し、二人で建てる石壁の家。そして、それぞれの道へ進みつつも二人にとって重要な場所である山。更には山を通して亡き父を想うピエトロなど、その美しい風景を大きなスクリーンで観る意味は大きいです。ただ、映画が始まってすぐに気づいてやや意外に思えたのは、アスペクト比がスタンダードサイズと言われる横縦比1.33:1(4:3)を採用している部分でした。でも観始めると、焦点であるべきはやはり人であって、その背景に気を取られ過ぎずにしっかりと物語が入ってきます。そしてそのせいか、久しぶりに(まだ未読である)原作を読んでみたいと思える映画でした。そういった意味でも、家庭用のテレビではより小さめなサイズになってしまうことを考えると、劇場で観なければ作品の良さが伝わり切れない気がします。
お国柄関係なく、男性の方がどうも夢見がちなのかもしれませんが、そこに「山」なんてロマンティック要素たっぷりな背景が絡んでくると、ついつい拗らせたり惑ったり。自分は山なんて殆ど縁遠いにも関わらず「何か解るよ」と思ったり、或いは思いたかったり?
異国の風景を通して、いつしか自分を省みながら郷愁を覚える、そんな作品です。良作。
まっすぐな友情に父息子愛
山がとても大きな役割を持つ映画で知らないことが沢山あって新鮮だった。山の映像が本当に美しかった。画面が縦長のような感じで視野に全てが入り、太陽によって色を変えるモンテ・ローザが必ず背景、前景に登場人物という構図が気持ちよかった。人間が大きく見えるが実はどれだけ人間が小さいかも映る。湖の水の色が吸い込まれそうに美しい。完璧でずっと眺めていたい映像だった。
地図、等高線を読む、用意周到にそして無理をしない。父親が登ったところに線、更にピエトロの線、更にブルーノの線が、それぞれ色を違えて地図に引かれていく。途中からピエトロの線は増えない。父親への反抗心と反抗期。父親の死をきっかけに20年近くたって山に戻り、ブルーノと二度目の、今度は長い再会を果たす。自分の不在の間にブルーノを二人目の息子のように接し共に山に登っていた父。父親とブルーノの線を追いかけて、途中から増えなかった自分の線を確実に引くべく山に登る。そして父親が埋めたメッセージ(ケルンにこういうの埋めるの知らなかった)を読む。自分と初めて登山した時の父の喜び、ブルーノと父が一緒だったことがわかるメッセージ。
父の残した願い通りに山小屋を建てるブルーノとピエトロ。子どもの時に一緒に飛び込んで泳いだ湖はこんなに小さかったのか、ブルーノは職人マエストロだから着実に家を建てていく。「石」(= ピエトロ)の意味の方言「ベリオ!」とピエトロを大声で呼ぶブルーノには喜びが溢れていた。
ピエトロの母親のおかげで本を読めるようになったブルーノは全てが上手くいかなくなったとき、「言葉が貧しいと思考も貧しくなる」と述べる。ブルーノもよく本を手にする大人になっている。そのブルーノは自分にはない、ピエトロの言葉や思考の力やとらわれずに動く自由さに憧れる。一方でピエトロは、父親に向かって心の中で言う。「父さんの息子の一人、ブルーノは行くべき道をちゃんと見つけたよ。もう一人の息子、僕はまだ何も見つけていないけど」。都会の子のピエトロは高原病で氷河の合間を飛んで渡れなくて具合が悪くなってしまう。ブルーノは山の男の子、逞しくて自由でいいなとピエトロは憧れただろう。そのピエトロがネパールに行きヒマラヤを含めて色んな山を登る人になる。
上に書いたのは時系列もバラバラで同時に起きたことではない。でも友達との関係はこんな感じなんだと思う。友達に何かを感じたり気がつくのは同時でなく、相手より少し遅れたり早かったり。羨ましく思ったり憧れたり疎ましかったり側に居て欲しかったり。
舞台のヴァル・ダオスタ州は最北西、イタリアで一番小さい州。イタリアのお尻とか言われているらしい。でもそんなイタリアのはじっこに、モンテ・ローザをはじめとして美しく荘厳な山々が肩を並べている。イタリアの多様性は半端じゃない。そして鳥葬。
おまけ
この映画で映った山々のほんの少しでも見たいと思いヴァル・ダオスタ州の街、アオスタに(ほんの数日のイタリア滞在中に)日帰りで行った。可愛らしい小さな街アオスタからどこを向いてもキリリとした山が見えてアルプスの雰囲気に浸れた。一方でこんな端っこの街にも劇場跡、延々と続く地下の石柱廊があり古代ローマの拡大願望と力に驚いた。(2023.9.)
須弥山と8つの山と
「ネパールの人々の世界は8つの山と8つの海に囲まれている。そして彼らの世界の中心には須弥山というとても高い山がある。そこで質問だ。8つの山を巡る者と須弥山を登る者、多くを学ぶのはどちらだろう?」
イタリアの小さな村。ここで生命が生まれ、恋が芽生え、始まりも終わりも大地に包まれてきた。よく笑い、よく食べ、よく遊ぶ...私たちが忘れてしまった素敵な物語。人生のすべてがそこにある...と言いたかったが...
終始静かに話が進む中で、最後にあまりにも重い何かを突きつけてきた。
元来、人間の生はこの作品の中で描かれているようなものだったのだろう。しかし時が経ち、人々は元々繋がっていた世界を切り分けてしまった。
何の脈絡もなく気持ち早めに物語が展開するように映るが、これは全て布石。最後に全部回収する。
原題はLE OTTO MONTAGNEであり、邦題はやや本作のテーマを曇らせてしまっている感が否めないが、当たらずとも遠からずというところだろう。
別に本作を観たから、「現代人は間違っている、文明ではなく自然に戻ろう」などと叫ぶつもりはないし、都会から離れてスローライフを…ということもないです。あまりにも時が経ち過ぎたのです。もう元には戻れません。私たちにとっては、元来の人類の営みこそが「帰れない山」なのです。
山は裏切らない
「俺は山に裏切られたことはない」
言葉にすると意味不明な言葉だが、最後にその意味ははっきりする
鳥葬を選び最後まで山の男として生きたブルーノ
父の意思、友人の意志を残された者の中心に据えた生き方は、永久にその回りを浮遊していくしかないのか?
悲しいがそのことが、人生の理である以上仕方がないのだ。久しぶりにストーリーに引き込まれる映画でした。
イタリア山岳地帯の壮大な自然。父親への確執と2人の少年の生き様❗️ただ寝てしまう😪率も高いから要注意
大人の映画です。
都会の少年ピエトロ 山に連れて行くエンジニアの父、現地の朴訥な少年ブルーノ
この3人の人間模様、反抗期、逆に親に見放され教育機会もない青年
と北イタリア 一部ヒマラヤの壮大な自然が全て
素晴らしい景観、ストーリーもこなれてる のだが
いかんせん 芸術派 でないワシには 展開が遅く
断続的に眠ってしまったズラ😪
でも自然は素晴らしいヨ、山岳地帯
キレットというか氷河というか雪山の亀裂
実の息子ピエトロ都会派 越えられず
野生児ブルーノ楽々超える
それがのちの都会派親子の確執になる。反抗期 31歳で父親死ぬまで
その代わり、家族から見放されている現地人の野生児ブルーノにアレコレ便宜を図ってた
31歳で宙ぶらりんの都会派ピエトロ、やっと父の思いを知り、山小屋建設2人で・・・
という感じ。ネタバレというより、この程度の情報は事前に入れといた方が楽しめる。
とにかく山岳地帯の大自然⛰️と父子、友達の生き様 の骨太だが静かな作品
細かいストーリーはどうでもよろしの壮大な作品。
道を切り開く青年と 不器用土着故に・・
ということで商業ベースで言うと、昔ながらの酪農、製法も少なくなってると有料パンフの受け売り。
有料パンフの中の袋付きの手紙✉️入ってた
東京MERの豪快ポスター挿入版よりも味がありました。
ただ、😪眠ることだけは用心!ある程度予習ネタバレもよし。展開の作品 ではなく リアルタイムで感じる作品だから。
映像美
離れられない山でもある
(オンライン試写会はネタバレがなくてもネタバレ扱い)ぜひ試写会ではなく実際の映画館でみたほうが良いかな
今年124本目(合計775本目/今月(2023年4月度)19本目)。
オンライン試写会で見ることができました。 fanvoice 様には感謝を。
そしてこの映画はその成り立ち上、イタリア文学という知識が求められるところ、そこの部分の補足説明が映画終了後のトークショーでちらっとあったのも良かったです。
この映画はタイトル通り山を描くタイトルですが、日本で山といえば、せいぜい富士山に行くだのといったような話しか出てこないのですが、この映画は舞台がイタリア。イタリアですのでかなりの山もあればいわゆる「山小屋」もあります。この映画はここ(この「ここ」というのは、当然、「山一般」ということ)でお話の大半が進みます。
日本とイタリアは文化がかなり違う部分もありますが、その代表例としては意外なところとして「山」なのかな、と思います。日本にも身近にあるけど、日本で山をテーマにした小説、映画等はあまりみないのに対し、イタリアでは絵本にはじまって幼児向けの本や教科書のレベルでも取り扱われるようです。このため、この映画の原作となる小説も(山文化を体験した当人でないと書けない、という点で)高く評価されたわけです。
もともと映画が原作小説をベースにしていること、また原作小説(アマゾンで買えます)をうんぬん話しはじめるとネタバレになるのでこのあたりできっておきましょう。
ただ、最初に書いた通り、「山のすばらしさ」をテーマとしている以上、試写会ではなく本放送で(また)見てみたいな、と思いました。
なお、若干民法的な解釈が怪しいかなと思える点があるものの(事務管理関係)、そこを突っ込んでも4.5以下にならず、法律的なお話をする趣旨の映画ではないのは明らかなので、そこは全部飛ばしています。
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