「そこそこおもしろかったです」MEMORY メモリー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
そこそこおもしろかったです
リーアム・ニーソン主演ということで期待していた本作。期待以上とは言いませんが、なかなか楽しませてくれました。
ストーリーは、アルツハイマーを患う殺し屋・アレックスが、依頼を受けて向かった先のターゲットが少女だったため、「子どもだけは守る」という自身の信念に基づき依頼を破棄するが、その結果自分自身が狙われてしまい、裏で暗躍する人身売買組織の存在を知ることになり対峙していくというもの。
とにかくリーアム兄さんの暴れっぷりが心地よいです。凄腕の殺し屋として、冒頭からいきなり魅せてくれます。その後もホテルのバーで男を軽く叩きのめしたり、警察が守るビルに単身乗り込んで激しい銃撃戦をしたりと、70歳とは思えないアクションで楽しませてくれます。そんなリーアム兄さんが一人で全てやりきってしまうというベタな展開と思わせておいて、それをうまく裏切るオチがなかなかおもしろかったです。そこへ繋げるための伏線もきちんと張っていたように感じます。
また、本作ではアルツハイマーを患う殺し屋という奇抜な設定が用意されていて、冒頭からその進行具合についてしっかり布石を打つ立ち上がりはなかなか上手いと感じました。その後も、仕事に関わる情報を忘れないように腕に書き込んだり、拳銃の組み立て時に部品を入れ忘れて目的を果たせなかったり、大事な証拠の隠し場所を忘れたりと、物語をおもしろくするギミックの一つになっていたと思います。
とはいえ、せっかくのアルツハイマー設定が、やや表面的な扱いに終わっていたのはもったいなかったです。自身の行動が思い出せずに焦るシーンが1箇所だけありましたが、そんなシーンがもっとあるとよかったです。単なるもの忘れではなく、自分さえも信じられないような苦しさや悲しさが描かれれば、さらに興味深い物語になったと思います。
他にも、セラの背負っている過去、メキシコ人への差別、格差社会、警察組織の腐敗、性的搾取など、さまざまな要素を取り込んだ脚本はなかなかおもしろかったですが、全体的に掘り下げは浅く感じました。一方で、登場人物は多くなり、話が少々複雑になった気がします。おかげで、序盤は顔と名前が結び付かず、若干置いてかれ気味でした。テーマを絞ってもう少しシンプルに描いてもよいのではないかと感じました。
主演はリーアム・ニーソンで、年齢を感じさせない彼らしい役どころで文句なし。脇を固めるのは、ガイ・ピアース、モニカ・ベルッチ、タジ・アトウォルらで、中でもモニカ・ベルッチは、こちらも年齢を感じさせない妖艶な魅力がありました。