「日本では似た考え方はないけれど…。」きっと地上には満天の星 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
日本では似た考え方はないけれど…。
今年231本目(合計507本目/今月(2022年8月度)7本目)。
映画自体が元ネタの小説にあるようで(公式参照)、その小説もあることないこと完全に全部架空です、ということはないはずなので(そのほうが怖い…)、ある程度固有名詞などは入れ替えたのだとは思いますが、基本的な趣旨としては史実に準じる、または「趣旨として」史実に準じる、という扱いだろうと思います。
結局、日本では似たような概念を探すことが難しく(日本ではこういった類型が想定されていないし、そもそもそのような場所は存在しない)、あえていえば「福祉行政(ホームレス行政)」になるのだと思いますが、映画内では行政(この語は、日本と文化圏と同じにする韓国・中国・台湾以外では珍しく、「明示的に」出ます)に対する極端な不信感がまず前提にあります。映画内ではそれが何なのか明確に描かれていませんが、おそらく「不法な占拠者に対する処罰の度合い」であるとか、(映画内では明示的には出ませんが)「ひとり親に対する福祉行政の充実さのなさ」という点が背景にあるものと思います。
日本に結局似たような事情がないことからなかなか日本と比較することは難しい一方で、結局のところ「主人公(誰を主人公にとるかは微妙ですが、母親?)が、子にかけた願い」という論点があるのは事実で、それはたとえ作り話だとしてもリアルでも実際に存在はしますし、存在しえます。
なかなかにレビューが難しい映画で、結局「日本に似た制度・概念が存在しない」という点(下手をすると、不法侵入などで刑事罰の問題になってしまう)があり、日本ではせいぜい「ホームレス救済の福祉行政」程度しかないものの(「しかない」というより、映画内で参照されているような類型が、日本では想定されていない)、趣旨は違っても「親が子に願う想い」というのは国の文化によって多少の差はあっても同じものです。
上述通り、日本では結局同じような類型を探すことが著しく困難ですが、あえていえば「ホームレス福祉行政」「ひとり親行政」など、似たような論点と考えることができるところ、日本ではむしろ「排除よりも救済」「救済を求める限りにおいて行政も最大限協力する」というのがごく当たり前になっている現状があるので、なかなかに対比がしづらいところがあります。
このように「日本にぴったり該当する制度がない」という事情から、たとえ作り話の範疇としても「普通に考えればありうる類型」に対しても「日本のそれと似た概念をあてはめるのが難しい」という点は確実にいえます。
もっとも、映画内で描かれているように「親が子の幸せを狙ってとった行動」に対しては賛否両論ある(必ずしも保護されるとは限らない)とはいえ、趣旨としては理解可能だし、日本でも概念自体はなくても趣旨としては同趣旨ないし趣旨として同一ないしほぼ同一というものは存在するので、そこの比較(海外におけるこうした弱者への対応と、日本におけるそれ)という考え方では単純に比較はできない(制度が違うため)ものの、類推することは可能で、その限りで日本においても見る価値がはあると思います。
採点上気になった点は下記ですが、特に大きな問題ではないのでフルスコアにしています。
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(減点0.1/字幕の配慮不足)
・ 現在ではミニシアター中心ですが、ミニシアターといっても、「シアター数が少ないだけで座席などでは大手とは負けない」シアターもあれば、明確に座席数などからして「ミニシアター」もあります。
一方でこの映画、妙に文字が小さく(字幕含む)、後ろのほうに座ると結構苦労します(上述通り、ミニシアターといっても、各シアターごとの規模はまちまちなので、一概にはいえない)。もし気になるようなら、真ん中よりも前のほうがおすすめです。
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▼ (参考/原題の topside について)
・ 単に「物事の上側」という意味です。日本語名はちょっと意訳しすぎているかな…というところはあります(ただし「満天の星(星空)」が何であるのか、などは映画内でも明示的に出ます)。