「疑惑が確信に変わる瞬間」なまず 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
疑惑が確信に変わる瞬間
舞台はマリアの愛病院。
レントゲン室で誰かが愛を育んでいる最中、突然レントゲンのボタンが押される。
情事を捉えたレントゲン写真は病院中に流出し、院内では犯人探しが始まった。
勿論、撮った方ではなく撮られた方。
その写真の容疑者として浮上した看護師のユニョン、恋人のソンウォン、副院長のイ、そしてそれらを見ているなまずの奇妙な日常が始まる。
予告でかなり変な映画だろうと目星をつけていったら、想像通りかなり異色な映画だった。
正直物凄く面白い映画かと言われればそうでもないけれど、決して駄作ではないと思う。
まあ好みはかなり分かれそうな印象。
少なくとも自分は嫌いじゃない、いや寧ろもう一回観たいくらいです。
18禁レントゲン写真、病院関係者の失踪、謎のシンクホール。
現実にはほとんど起きないが全く起きないとも言い切れない不思議な出来事が続いていく。
変な日常の連続を見せられ続けると次第に見えてくるこの映画の明確なテーマ「信じるか疑うか」。
なまずが暴れると地震が起こるという言い伝えは韓国でもあるらしい。
この言い伝えは科学的には証明されておらず、あくまでも噂に過ぎないが、実例は確かにある。
この映画は地震ではなかったが地殻変動が起きシンクホールが誕生した(そしてソンウォンが職を得た)。
偶然とも必然とも取れそうな絶妙なラインに乗せてくるのが上手い。
そういった意味で、なまずは信じるか疑うかにおいての中立的な存在であり、この映画の進行役としては適任である。
ただ、せっかくなまずを全ての傍観者的立ち位置に置いたならば、もう少し効果的になまずを使えたのではないかとも思う。
なまずというタイトルの映画にして圧倒的になまずの画が少ないし、水槽に入れられて飛び跳ねることしかできないなまずが全ての傍観者になるのはやや無理がある。
哲学的な問いだが、信じた者は得をして疑った者は損をするというように信じることが重視されており、マリアの愛病院からも分かる通り若干宗教的観念も見られる。
映画の構造的にもオムニバス形式を感じさせつつも連続した物語になっていてなかなか斬新だった。
画面で繰り広げられる出来事に隠されたメッセージを読み解きながら鑑賞でき、面白いものを観させてもらったなという印象。
先日の『ベイビー・ブローカー』ではあまり感じなかったが、主演のイ・ジュヨンがこんなに魅力的な役者だったとは…
梨泰院クラスの期待値だけがどんどん上がっていく…