「「素顔の日常」からにじみ出る絶望的な閉塞感」ガザ 素顔の日常 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
「素顔の日常」からにじみ出る絶望的な閉塞感
映画の題名や写真、予告編から、紛争地域というだけではない、ガザの普通の側面を紹介する、明るいドキュメンタリーと予想していた。
しかしそうではなく、具体的な事例を通じて、「素顔の日常」においてさえ、絶望的な閉塞感があることを伝える作品であった。
2007年から封鎖された国境に検問所は両端に2ヶ所しかなく、また、海は2009年から陸から5.5kmまでしか出ることができないので漁業もままならない。
パレスチナ難民全体では、1948年の「当初70万人だった難民」が、避難先で世代を重ねて「今や約560万人」らしいが、一夫多妻の子だくさん家庭が出てきて、そりゃ増えるなあと思った。
燃料不足も深刻で、仕立屋は困り果てる。
笑顔のタクシー運転手も、実は借財を背負っている。
タイヤを燃やし、フェンス越しに物を投げる暴動。
イスラエル兵に撃たれ、障害者となった若者は、溜まった思いをラップに歌う。
本作の出だしは、6~7人を中心にした通常のインタビュー映像で構成されていたが、後半になるにつれ、そういう整然とした枠には収まらなくなっていく。
緑一色に染まった、イスラム武装組織ハマス(公安調査庁HP)の集会の映像は、もっと観たかったが映画のテーマに合わないのか、すぐに終わってしまったのは残念だった。
大規模な戦闘があった2014年から5年くらいの映像のようだが、映像がいつどこでという情報には乏しい。しかし世界から忘れ去られて、いつまで経っても閉塞状況は変わらないのだから、同じことなのかもしれない。
夜遅い上映であったが、観に行く価値のあったドキュメンタリー作品だった。
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