「圧巻の復讐劇」ノースマン 導かれし復讐者 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻の復讐劇
難しい歴史も、難しい言葉も、難しい理屈も
何にもない。
削ぎ落とした内容が強く深い。
ただただ眼の前で親王を殺された王子が、長い年月をかけて、
復讐を成し遂げる話し。
成る程!!「ハムレット」を下敷きにしているのですか。
主人公のアムレートはhamletと書く。
映画の発案者はアレクサンダー・スカルスガルド本人で、
バイキング伝説にも通じるお話し。
良い映画を観た、との満足感と緊迫感に痺れた。
後半の一時間は時間をかけて、急がず慌てず、
観てる私も、その復讐までの時間を愛おしむように、
焦らず楽しんだ圧巻の50分。
役者が良い。
殆ど色を無くしたような映像は、時に影絵でも見ているようだ。
殺し合いも実際に身体を刺すシーンは刀を振り下ろす片方しか
見えない。
血は赤く写らない。
ラストの「ヘルの闘い」
アムレートとフィヨルニルは溶岩沸る山の頂上で全裸で刃一本で闘う。
ここが影絵のようで、スパーンとフィヨルニルの首が飛ぶ。
アムレートも既にチカラ尽きている。
アムレートのなんとも言えない満足の笑み。
太鼓や刃物のぶつかり合う音で、存分に残酷シーンになっている。
ニコール・キッドマン。
イーサン・ホーク、ウィレム・デフォーなどを惜しみなく配役して
贅沢だ。
やはり場を浚ったのは若くて美しいアニャ・テイラー=ジョイ。
惜しみなく裸身を晒して美しさと強さを存分に見せつけた。
最近作では「ミッドナイト・イン・ソーホー」に継ぐ
素晴らしさだった。
主役のアレキサンダー・ステルスガルドもやや年老いた感じだが、
大きな逞しい身体や北欧男の寡黙なバイキング魂は、奥底から滲み出る。
一見して地味な作品だが、心に深く残る。
良い映画を見せて貰った・・・その満足感は深かった。
惜しむらくは前半にあまり見どころがない点。
10分か15分は短くできたと思う。
それにしてもアニャ・テイラー=ジョイはデビュー作が
ロバート・エガース監督の初監督映画「ウィッチ」のヒロインだった訳で、
ほぼ10年近く前だからアニャは18歳位だった筈。
堂々としていて神秘的かつ秘密と抑圧が感じられた。
そしてほぼ10年後。
見違えるほどのゴージャス美女に成長した。
それにしてもエガース監督作品になんと似合うことか?
エガース監督のミューズ!!
男同士の深い確執をホラーテイストで描いた「ライトハウス」も、
ギリシャ悲劇のような映画だった。
モノクロのような映像と光と影のコントラスト。
そこに人間ドラマ、なんとも深みがある。
この映画「ノースマン導かれし復讐者」、
劇場公開では成績が良くなかったが、配信やDVDの人気が高くて、
9000万ドルの予算は無事回収して黒字となり、
人気の高さを裏付けたと聞く。
次回作が待ち遠しい監督さんだ。