「神話の世界に生きる人間」ノースマン 導かれし復讐者 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
神話の世界に生きる人間
2022年。ロバート・エガース監督。9世紀の北欧、キリスト教以前の神話の世界を背景に、父を殺された王子の復讐を描く。父親が殺されるまでの生活、ヴァイキングの一員として略奪にあけくれる数年間、「啓示」を受けて復讐を思い出してフィンランドへ渡る、そして復讐の実行。神話とともに生きる北欧の人々の気高く荒々しい姿をテキパキと表現していく。
キリスト教以前であるとともにヒューマニティ以前でもあるので、男たちは熊や狼や狐や犬といった獣と一体となって叫ぶ。生きる意味は「名誉」を失わないことにあり、死は「ヴァルハラ」(天国みたいなところ)へと転生する旅であり、人生は運命の糸によって既に定められたものである。
なんでも描けてしまうCGで描き出すのは、寒々しい景色と冷たい雨、うねる海原。男たちも大柄だが、インド映画に比べればいずれも「神話的」とはいいかねる「人間」のスケールだと言わざるをえない。それが悪いわけではないけれども。
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