「足跡の行方」ルッツ 海に生きる MARさんの映画レビュー(感想・評価)
足跡の行方
地中海にて、代々引き継がれるボートで漁業に営む男が、魚が取れなくなり、発育に問題があるという子どもの医療費や生活にも困り…決断に迫られる物語。
地中海はマルタ島から日本へ初上陸の作品とのこと。
ゆったりとしたのどかな風景とは裏腹、仕事的にも金銭的にも、家族との間にも深刻な問題が山積みのジェスマーク。更には、長年連れ添った相棒のようなルッツも浸水が始まり…。
夫婦二人だけの力で子どもを助けたいジェスマーク・・・そして、収入が安定しないとは言え、代々引き継いできた漁師という仕事にも誇りを持っている。
う~ん、子どもの為なら現実を、と口では簡単に言えるけど、彼の気持ちもよくわかる。かと言って、勿論奥さんが間違えているわけではないし・・・。
決して贅沢な暮らしを求めているわけではなく、奥さんや子どもとの普通の暮らし、大切な仕事、そして引き継がれてきたルッツの存在。そんなささやかな幸せのどれひとつも叶えることが難しい現実よ・・・。ルッツを振り返るジェスマークの視線に胸が張り裂けそうになった。
この結末をどう感じるかは人それぞれだけど、哀しさの中にも暖かさはあったのかな。
冷凍車、きっとここにも元主人との物語があったんでしょうね。
その他、修理を手伝ってくれた漁師仲間や、正攻法でなくとも手助けをしてくれた人達の存在も良い感じ。
強いて言えば、ルッツとジェスマークの物語をもっと大袈裟に描いた方がラストにジーンとくるかなと思ったことや、お義母さんをどうせならもっと分かり易く嫌~な人にした方が個人的には良かったかも。言うて、義母や祖母として普通レベルのお節介さんって感じだし、なんならジェスマークの方が意地っ張りのカタブツに見えちゃうかも(汗)
また、ヨーロッパの漁業事情なんかも垣間見えて面白かったですね。煽りを食らうのはやはりこういう人達なのか。。
とにもかくにも、男として、父親としてのプライドや力強さ、そして情けなさ・・・寂し気なジェスマークの瞳に、ひとつの決意を感じることができた良作だった。