「リアル・ロシア?」ヘィ!ティーチャーズ! odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
リアル・ロシア?
モスクワの大学を卒業しロシアの地方の中学校に新米教師として赴任した国語のエカテリーナと地理のワシリイ先生の1年間の授業を描いています。
生徒たちの発言は自由活発、「僕はドネツク出身」、「ウズベク語で人間は?」、「先生は昔からいるお婆さん先生と違う」、「教師は夢と希望だけじゃ務まらない」、「文学の先生は愛国教育で僕らに落第点をつけた」、「社会主義死ね」、「国家は人々に帰属すべきだ」などなど、政治や社会情勢、恋愛や性、ジェンダーの問題など多様な意見が溢れ出す。驚いたのはある生徒は「反体制派には共感するし、プーチンは終わっている」と言って、「今のはカットね」とフォローしていましたが、よく、上映禁止にならなかったですね。まあ、教えることの難しさは世界共通でしょう。
ロシアの学校制度は小学校1-4年、中学校5-9年、高校10-11年。3つとも同じ敷地の中にあって、基本的に11年間同じ学校に通うことになっています。しかも、クラス替えもあまりなく、11年間同じクラスメートと一緒にいることも珍しくない。 義務教育は9年間ですが、9年で勉強をやめる人はあまりいません。9年生を卒業して、専門学校等に進学する人がいますが、ほとんどの人は11年生を卒業して大学に進みます。
実にドラマティックに撮られていたから映画はドキュメントと聞いて驚きました。ユリア・ビシュネベッツ監督は学校についての映画を撮りたいとずっと思っていたが、ロシアでは学校はある種の軍事機密のようなもので難しいとあきらめていた時、ニュースをみてチャンス到来と興奮。
監督が語るには
「一流大学の若い卒業生が地方の一般的な学校で働く特別プログラムがあるというニュースを聞いたとき、たちまちとても興奮しました。モスクワの知識人とロシアの小さな町の子どもや学生、それは2つの異なる世界です。この2つの世界が一緒になって衝突するとき、間違いなくドラマチックな大きな可能性が生まれます。だから私は、学校にもアクセスできる人で、このプログラムに参加してくれる主人公を探し始めました。いくつかの学校で若い先生たちに会いましたが、どういうわけか、ワシリイのことは以前から知っていました。彼は絶滅危惧言語を扱う仕事をしていて、以前、ジャーナリストとして彼にインタビューしたことがあったからです。彼は言語活動家のようなもので、以前から交流があった人だったので、とても嬉しかったです。そして、ワシリイと同じ学校で働くことになったエカテリーナは、映画の教育を受けていて、脚本家でもある。それに、彼女は私が以前に撮った映画のことも知っていたので、とてもよかったです。もちろん、緑色の髪をしたフェミニストであるエカテリーナ自身を学校で観察することがとても面白かったので、何の心配もなく、撮影を開始しました」とのこと。
ただ、予算は全くなく、クラウドファンディングでスタートし、カメラマンも何人かのボランティアによるそうです。
監督は撮影後、2022年9月、ダゲスタン共和国での反戦デモの撮影中に拘束され、5日間投獄された後、さらなる刑事訴追のリスクを負ってロシアを出国、ドイツに移住しました。