劇場公開日 2023年5月26日

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「リアルなドラマと躍動感のある獅子舞を見るにつけ、なぜCGなのかという疑問が湧いてくる」雄獅少年 ライオン少年 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5リアルなドラマと躍動感のある獅子舞を見るにつけ、なぜCGなのかという疑問が湧いてくる

2023年6月24日
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努力と師弟の絆でどん底から這い上がろうとする「スポ根」ものとして、十分に楽しめる。
ただ、それ以上に印象に残るのは、夢を追いかけるだけでは食べていけないという冷徹な現実である。
生活のために夢を諦めて生きてきた師匠や、予選を勝ち上がったものの家庭の事情で本選出場を諦める主人公の境遇には、身につまされるものがある。
それだけに、師匠の背中を押す奥さんの姿には胸が熱くなるし、仲間のために戦いに復帰する主人公の姿に心を揺さぶられるのである。
奇跡は簡単には起こらないが、それに挑んだ証は残されるという結末も秀逸で、「獅子の心」を持って挑戦し続けることの大切さを実感することができた。
その一方で、SFでもファンタジーでもなく、極めて現実的なこの物語を、なぜCGアニメで作ったのかという疑問も残る。
確かに、流麗で美しい映像や、獅子舞の場面の迫力と躍動感はCGならではだと思えるのだが、東洋人の特徴を強調したようなキャラクターは妙に生々しく、これなら実際の俳優が演じた方が良かったのではないかとさえ思える。
リアリティーに溢れたCGを見るにつけ、逆に、実写で、本物の獅子舞の妙技を見たくなってしまった。

tomato