「社会の下からの一瞬の夢」雄獅少年 ライオン少年 Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
社会の下からの一瞬の夢
クリックして本文を読む
すばらしかった……
アニメをつくる人たちは、ボケてないと思いました。
つまり、国家の作り出す物語に騙されていないという意味で。
いや、そう思いたいだけかも知れませんが……
残酷なほどの貧富の差のある今の中国で、内陸部の田舎に生まれ、両親も彼自身も生活のために毎日同じ働くしかなく、都会生まれの人とは違って「自己実現」など無縁の世界に生まれた主人公が、「獅子」になって一瞬の夢を叶えようとする話です。
今の中国そのままに、上へ上へと登ろうとするイメージが獅子舞という伝統芸能を用いて語られるのも唸る設定で、おそらく今の中国で伝統芸能でトップになることは経済的成功を勝ち取るほどの価値はないでしょう。
しかし、貧しい生まれの主人公が登れる可能性のある高みはそれしかなく、まるで貧しさに耐えながら社会を支えている人々の叫びや願いを丸ごと彼が引き受けるかのようにしてあの場所に達する(そして達した途端に落ちる)ことのカタルシスが、見事に演出されていました。
それはある意味、こうした貧富の差を生み出す国家体制への批判も含んでいるように思います。もちろん、それはあからさまには描けないのですが。
ラストがグダグダせずに、余韻を残しつつすっきり終わるのも好感。
日本の吹き替え陣もよかったです。
コメントする