「本当の意味での「埋蔵金」は…」ゴールデンカムイ talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の意味での「埋蔵金」は…
<映画のことば>
これから北海道は戦場になる。
明治末期に作詞された鉄道唱歌の北海道編は、当時の北海道の位置づけを、次のように歌い上げました。
千里の林、萬里(ばんり)の野
四面は海に圍(かこ)まれて
わが帝國の無盡庫(むじんこ)と
世に名ざさるゝ北海道
このころには、道内には豊富な石炭の埋蔵も確認され、その石炭の本州への積み出しのため、鉄道網も整備されつつあったころです(実際、日本で最初の鉄道は新橋・横浜間ですが、その次が神戸・大阪間。それに次ぐ国内三番目の鉄道路線は、道内の三笠・手宮間で敷設されました。)。
本作は、そのころの北海道が舞台とのこと。
それこそ「無盡庫」(取り出しても、取り出しても、尽きることのない倉庫)から供給されるかのように、広大な農地から生産される大量・良質の農畜産物は食料として国民の生活を支え、豊富な埋蔵量の石炭は、後に高度成長期の日本をエネルギー資源の側面から支え、また近代国家の建設に必要な「鉄」の生産にも、燃料などとして、一役も、二役も買ってきました。
いわゆる「エネルギー革命」によって、燃料の中心は石炭から石油へと大きく変わり、石炭が燃えているところを見たことがないという方も、今の若い世代の方には少なくないとも聞き及ぶのは、かつては「黒いダイヤ」として石炭がエネルギー源の中心を占めた時代を知る者のひとりとしては、寂しい限りでもあります。
前掲の映画のことばは、直接には、存在するとされる「アイヌの人たちの原資による隠し埋蔵金」をめぐった争いのことをいうものですけれども。
評論子には、上記のように、北海道に埋もれている「本当のお宝」は、実は「これからの北海道から豊富に生産される資源」のことなのであり、これをめぐる争いを暗示しているものと、勝手に解釈しました。
「そんなの、本作のストーリーとはなんの関係もない、お前の勝手な妄想だろう」という数多(あまた)のご批判は、ここは一番、あえて聞こえないことにして。
本作は、上記の意味では佳作と評しておきたいと思います。
現に北海道人であり、北海道LOVEの評論子的には。
(追記)
この時代の北海道は、明治5年の開拓使設置に始まり、いわゆる「三県一局」のいわば分権体制を経て、北海道開拓の強力なエンジンとなるべき旧北海道庁(今の地方自治体としてのそれではなく、明治政府の北海道地方の出先機関としての北海道庁)が新たに設置され、本格的に北海道の拓殖が始まろうという時代背景だったと思います。
それは、日清・日露の両戦役という時代背景を経て、明治政府が国策として掲げた「富国強兵」を実現するためには、未開地・北海道の開発は不可欠であり、そこから豊富に産出される資源を有効に利用することが絶対に必要と理解されたことによるものでしょう。
そして、本作のストーリーに絡まる「混沌」は、その時代背景を、よく捉えているとも思いました。
評論子は。
(追記)
原作は漫画もアニメも見ていません。
おそらくは、原作を前提にするとかなりビントの外れたものとなっているとは思うのですけれども。
純粋に「映画作品としての本作」という立場からのレビューということて、ご理解いただきたいと思います。
なお、この手の作品では、シリーズ化されている『ロード・オブ・ザ・リング』も、『キングダム』も観ていないという、実は映画ファンの風上にも置けない(?)とんでもない「うつけもの」(『身代わり忠臣蔵』)ということにになりそうですけれども。
本作のシリーズを観ていくほか、これをきっかけとして、上記のようなシリーズにも食指を伸ばしてみようかとも思います。
そう思わせてもらえたことも、本作の真価の一つと言えると思います。
評論子的には。