「明治浪漫にアイヌ文化や埋蔵金伝説を融合させた労作」ゴールデンカムイ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
明治浪漫にアイヌ文化や埋蔵金伝説を融合させた労作
通算発行部数2700万部を突破するという大ヒット漫画の実写映画だけあって、俳優陣も映像も実に豪華絢爛でした。ただ個人的には原作漫画もアニメ版も観ていないので、どんな点が人気の秘訣なんだろうと、興味津々で観に行きました。
舞台は日露戦争直後の北海道なので、明治末期ということになりますか。日露戦争最大の激戦地だった203高地で活躍した主人公”不死身の杉元”が、アイヌ民族の少女・アシリパの手を借りてアイヌの埋蔵金を探すという明治浪漫溢れるお話でしたが、アシリパが杉元に協力するにあたり、「人を殺さないこと」を約束させる部分が、いかにも現代漫画的で、時代的にも雰囲気的にも「るろうに剣心」を想起させられました。
「人を殺さない」と言っても、あくまで杉元に課せられた足枷であるため、埋蔵金を奪い合う敵となる大日本帝国陸軍第七師団は普通に残虐行為をしまくるし、これまた埋蔵金を狙う新撰組”鬼の副長”こと土方歳三を棟梁とする脱獄囚の一団にも、そんな義務は課せられておらず、従って作品全体としては残虐シーンがちょくちょく出て来るあたりも「るろうに剣心」と肩を並べる感じでした。また、不気味な風体のキャラクターが多数登場するところも、同作に通じる部分があると思ったところでした。
かように「るろうに剣心」との共通項に目が行く部分が多かったのですが、一方で本作独自の路線として、アイヌ文化を詳細に取材した結果が作品のそこここに表れているところにも目が行きました。我が国の原住民でありながら、世間的に殆ど知られていないアイヌに触れる機会を作ったことが、原作漫画が大ヒットした最大の要因の一つなんだろうなと感じたところです。しかも本作のテーマであるアイヌの埋蔵金の話にしても、実際徳川埋蔵金や豊臣埋蔵金の伝説よろしく、都市伝説というか民間伝承というレベルで残っているそうで、そうした風聞に着想を得て魅力的な作品を創った原作者のイマジネーションは、素晴らしいの一言に尽きます。
以上、本作が話題になる淵源を探りつつ観た結果、ヒットして当然だよなあという感想を持つに至ったのですが、一つ不満が残りました。これは昨年観た「沈黙の艦隊」にも共通することなのですが、原作漫画の序盤の序盤の部分だけを映画化しているにもかかわらず、本作の題名や宣伝にそのことが認識できる要素が皆無だったこと。ファンの間では周知のことだったのかも知れませんが、初見の私にとっては初めに言っておいて欲しかったなと感じられました。まあ「パートⅠ」と銘打っておいて、コケたので「パートⅡ」はありませんというのではカッコ悪いから仕方ない面もあるのでしょうが、ちょっと肩透かしを喰らった感がしてしまいました。
そんな訳で、本作の評価は★4とします。