「和製闇鍋ウエスタンの始まり」ゴールデンカムイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
和製闇鍋ウエスタンの始まり
またまた大ヒットコミックの実写映画化で、またまた主演は山﨑賢人。
コミックの実写化はさておき、本作や『陰陽師0』や『キングダム』最新作など、今の日本映画界は山﨑賢人しかおらんのかい!
これでつまらなかったら文句言う所だが、人気コミック実写×山﨑賢人の組み合わせは『キングダム』に続いて成功したようで。
いつもの事ながら、原作未読。が、タイトルを聞いた事やアニメ化されているのも知っている。
本当に大人気&大ヒットコミック。実写映画化の噂が出た時からキャスティング予想されたり、失敗したらフルボッコされそうなくらいの。
数年前に実写映画化の噂が出始め、満を持しての公開。キャスティングや満足度もファンからは概ね好評。
ファンの期待を裏切らなかったようだが、私が興味惹かれたのは話そのものや題材。
明治初期の北海道。アイヌ民族の大量の金塊。その価値、80億円!
一人の男がアイヌたちを殺し、強奪しようとするも捕まり、網走刑務所へ。
誰にも金塊の在りかを教えず、脱獄囚24人に金塊の在りかを印した刺青を彫る。その刺青が全て集まって、金塊の在りかが分かる。
脱獄囚24人一人一人を探すのも途方に暮れるが、刺青彫られた脱獄囚たちも一筋ではいかない連中ばかり。唯一金塊の在りかを知る男も“のっぺらぼう”と呼ばれる謎の人物…。
刺青彫られた脱獄囚たちも容易く見せてくれる訳はない。なら協力し合うか、それとも刺青だけ剥いで…。
アイヌの幻の大金塊。それは確かにある。だから躍起になって探す。
脱獄囚たち、軍人、死んだと思われたあの人物…。
そして、ここにまた一人…。
日露戦争の激戦地。地獄のような二百三高地を生き延びた元軍人。刺されても撃たれても、殺そうにも死なない。付けられたあだ名は“不死身の杉元”。
彼はある理由から一攫千金を狙い、砂金取りをしていた。
一人の男が大金塊の話をする。脱獄囚の一人であった。
が、クマに襲われ絶命。杉元も襲われる。
そこを助けたのが、アイヌの少女・アシリパ。
アシリパのアチャ(アイヌ語で父親)は金塊強奪時に“のっぺらぼう”に殺された一人。
アシリパはアチャの仇を討つ為、杉元は一攫千金の為、協力。金塊探しと争奪戦の中に…。
一攫千金の埋蔵金ミステリー、北海道の大雪原を舞台にしたお宝探しのアドベンチャー、強烈個性の登場人物たちが入り乱れるサバイバル・アクション…。
意外やユーモアもあり、アイヌ料理が美味しそう。ちなみにその食事シーンの“オソマ”が笑い所。意味は調べて下さい…。
原作コミックも“冒険×歴史×グルメ×ホラー×ギャグ×ラブの、和製闇鍋ウエスタン!”と形容されているとか。納得。
役者陣も身体を張ったアクション熱演。
過酷だったという極寒の北海道ロケ。苦労の甲斐あってスケールや画面映えする。
クマやオオカミのCGのクオリティーの高さには驚いた! 『ゴジラ ‐1.0』もそうだけど、日本のCGレベルもここまで来た!
監督は『HiGH&LOW』シリーズで知られているらしいが(特別興味もないので名前も初めて知った)、上々のエンタメ手腕を発揮。
クオリティーの低さが嘆かれていたのはもう一昔前。今ではもう邦画のTHE王道エンタメと言ったら、コミック実写化と言ってもよくなってきた。
それらも充分良かったが、私が特に興味惹かれたのはアイヌ文化。
北海道に多く住んでいた日本の先住民族。
題材にした映画も多いが(奇しくも今週末『カムイのうた』が公開)、描かれるのはインディアンと同じく迫害・差別の悲劇的な歴史。
しかし本作(原作コミック)では、強く逞しく、精悍で誇り高き戦士として。
アイヌの言葉、暮らし、料理などアイヌ文化も多く紹介。我々は日本の歴史について知らない事がまだまだある。
現在のアイヌ人口は何を定義にするかで定まってないらしいが、“アイヌの血を引く”とすれば1万人強。失われていく文化と民族ではある。
が、こうして映画やコミックの題材になり、それがきっかけで興味を持つ世代も。
決して風化させてはならない。映画やコミックは時にその手助けになる。
山﨑賢人はほとんど信と変わり映えしないじゃんと言われても仕方ないが、無鉄砲な熱血若者の信よりかは大人の漢。
一攫千金の為の悲しい過去を背負い、二百三高地でも多くの人を殺し、地獄行きは特等席。
が、ただ荒々しく猛々しいだけじゃなく、人として礼儀もわきまえている。アイヌたちにも敬意を払い、差別・偏見はナシ。アシリパの事もさん付けで呼ぶ。
原作のイメージとは違うらしいが、何だかんだ山﨑賢人には真っ直ぐで熱い男がハマるのである。
山﨑賢人主演だが、真の主役と言っていいのは山田杏奈。
近年赤丸急上昇の若手実力派だが、キュートなルックスの彼女に野性的なアイヌ少女役は…と当初は思ったが、これがハマり役。アイヌ語も披露し、アクションや変顔リアクション含め、魅力も存在感も山﨑賢人を食うほど。終始クールだが、そんな中で時折見せるはにかみ顔がやっぱり可愛いの何の!
豪華なキャストが揃ったが、ほとんどが奇抜な強烈メイクを施しているので半分も分からず、EDクレジットでこの人だったのか!と。
戊辰戦争で戦死した筈の新撰組鬼の副長・土方歳三は生きていた! 歴史上の人物も絡めた面白さもさることながら、老土方役の舘ひろしが存在感。
でもそれ以上にインパクト残ったのは、脱獄囚の一人の矢本悠馬。裏切ったり味方になったり、間接外して“妖怪”になったり、テンション高めの演技でユーモア担当。杉元とアシリパの仲間に加わるようで、今後旅が愉快になりそう。
そして、玉木宏。強烈メイクや頭から液も垂らすが、あれこれ言う必要もないだろう。とんでもねぇー怪演。何やら土方が接近し、今後の行方を阻む強敵になりそう。
EDクレジット中には今後登場するであろうキャラが何人か。キャラの宝庫。
言うまでもなく、次作へ続く。興行も好調なスタートを切ったようだし(国内ランキング初登場1位、OP成績5億円超え)、評判も含め、シリーズ化は確定だろう。
『ゴールデンカムイ』初体験だったが、金塊探しと争奪戦の行方、杉元とアシリパの目的は果たせるのか、二人の絆も熱いものがある。
そして、“のっぺらぼう”は誰…?
また日本映画に楽しみなシリーズが一つ増えた。
大将軍への道と金塊ゲットの大作シリーズ2本背負いは大変だろうが、山﨑クン頑張れ!
(『陰陽師0』もヒットしたらもう一つ加わるのかな…?)
私の旧姓はアイヌ文化伝承・普及の第一人者の方と同じで、しかも祖父はその方と名前が一文字違い。年も近く、育ちや職歴も似ているので親戚なのではないか?(なんなら、兄弟なのでは?)と思うのですが、父は頑なに否定。
絶対に赤の他人で我が家とは関係がない、って言うんです。
あまりの否定ぶりに、父の意識のどこかにアイヌ蔑視があるんじゃないか?と疑念がよぎりました。
全国に1700人しかいない名字だから縁戚の可能性はあると思うんですけどねぇ。
まぁ、明治時代の方々の話なので真実はすでに調べようがないのですが。
ゴールデンカムイ、色々と感慨深いです。