劇場公開日 2023年5月5日

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「無垢なロバの視点で描く映像が、意外に前衛的で驚かされる一作」EO イーオー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0無垢なロバの視点で描く映像が、意外に前衛的で驚かされる一作

2023年8月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

一頭のロバがさまよう最中に出会った人々が、ある種勝手に騒動やドラマを繰り広げるという、一種の「彷徨もの」と呼んでも良いような種類の作品です。

無垢なロバの視点から人間社会を描くということで、もちろんそこには文明批判の視点も含まれているのですが、撮影監督ミハウ・ディメクが描くロバ”EO”の見る世界は、時に前衛的だったり、実験映画のようでもあったりして、むしろ人工性をばりばりに打ち出しています。かわいいロバのつぶらな瞳を愛でたいと劇場に足を運んだ人の中には、度肝を抜かれる人もいるでしょう(もちろん、かわいいロバの姿もたっぷり堪能できるのですが)。

ロバが主人公であるなど、本作はイエジー・スコリモフスキ監督が原案としたと表明している、ロベール・ブレッソン監督の『バルタザールはどこへ行く』(1966)の物語的骨格を忠実に引き継いでいます。さらに、彷徨した先で生じる事件を描いていくというリニアな構成と新奇性の高い映像の組み合わせという点では、『異端の鳥』(2019)も連想させます。無垢なるものに対する人間社会の暴力的な介入という面でも。

公式ホームページには、ロバ牧場のリンクも貼ってあるんだけど、本作見た後で心置きなくロバを愛でることができるかというと、ちょっと複雑な気分…。

yui