「イーオーよどこへ行く?」EO イーオー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
イーオーよどこへ行く?
ポーランドの巨匠とはいえ、重厚なものもあれば、常識で推し量れない怪作や奇作も多いスコリモフスキ監督。「EO」もつぶらな瞳をしたロバがサーカスから離れてトボトボとさまよい歩くというなんとも動物ファンタジー的な趣きだが、可愛らしい仕草も数多くあれば、それとは一転して人間が巻き起こす騒動や悪事を見つめたり、ギョッとする暗視スコープ風の映像や、はてにはEO自身がロボ化してしまったかのようなシュールな描写までてんこ盛り。いちいち頭いっぱいに「?」を抱えこんではキリがない。あらかじめスコリモフスキ作品であることを認識した上で、全ての「?」を柔軟に受け入れ、人間の生態をちょっと離れたところから観察するこの”ひととき”を味わいたい。なお、ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』からの影響は一目瞭然。その昔、この映画の鑑賞時に涙を流したというだけあり、スコリモフスキにとって本作が念願の企画だったことが窺える。
コメントする