劇場公開日 2023年5月5日

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「流離うロバがそのつぶらな瞳に映し出すものとは?」EO イーオー 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0流離うロバがそのつぶらな瞳に映し出すものとは?

2023年5月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

サーカス団が閉鎖されたために居場所をなくしたロバのEOが、馬小屋、農場、木が伐採され続けていく森、サッカー場、病院、伯爵婦人が住む豪邸、ダム、そして、屠殺場と転々としていく。

サーカス団が閉鎖されたのは動物愛護団体の抗議が原因だが、そのために外の世界に蔓延る人間社会のさらなる矛盾とエゴをEOは目の当たりにしていくという設定は、予測の範囲内だが、物言わぬ動物のロードムービーはスリルに満ちていて最後まで目が離せない。動物好きは時々目を背けたくなる場面があるが、勿論、動物たちの安全は担保された上で撮影されているのでご心配なく。

EOが迷い込んだ森ではハンターたちがレーザー照射で動物たちを狙っている。サッカー場に迷い込んだEOがPKを妨害したことから負けチームにボコボコにされる(そのものスバリは映さない)、やがて、屠殺場に連れて行かれる。生々しくも痛々しい場面に次々と遭遇していくEOが、その都度、つぶらな瞳に恐怖と憂いを湛えているように見えるのは、監督のイエジー・スコリモフスキが仕掛けた演出的な秘策なのか、それとも、そもそもロバは感性が豊かなのか、そこに本作の魅力が凝縮されている。

『EO』は『帰れない山』と共に昨年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を分け合った。2作品は偶然同時期に日本で公開され、一方では「ザ・スーパーマリオブラザース ザ・ムービー』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOL3』が拡大公開されヒットしている。両分野はまるで異なるし、客層も違うだろうが、個人的な意見を言わせていただければ、どっちも間違いなく面白く、全く別方向へいい案配に振れている。これだけは伝えたいと思う。

清藤秀人