「手堅いプロの技術、豊かな寓話」EO イーオー sayuさんの映画レビュー(感想・評価)
手堅いプロの技術、豊かな寓話
ともかく撮影技術の面では現在の世界最高峰に連なる作品。目を引かれるのは周到に組み立てられた照明だけど、本当に斬新なのはサウンドデザイン。水滴が落ちる、木々の間を風が吹き抜ける、車のタイヤのきしみ、どれもきちんと考えられ練り上げられたサウンド。
そして物語は、映画史的伝統にしっかりと根ざしていて、複雑な記号の網の目が豊かな読みを可能にしている。文学や哲学の研究者が見ると夢中になるのでは。とりわけ、映画の終盤でロバのイーオーが湖にかかる高い橋をわたって、天国へ向かう途中のような静かな庭園に至る場面は、近年まれな美しいショットだと思う。
ブレッソン『バルタザール』からの広義の翻案だけど、そこに現れる暴力や悪意がむき出しで苛烈なのも、まさにいまの時代の映画として撮られた証拠。
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