別れる決心のレビュー・感想・評価
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パク・チャヌクの歪んだユーモアが弾けた笑えるノワール
映画の冒頭シーンから、どことなくシュールな可笑しさが漂っていて、ああ、パク・チャヌクという人は凄惨な映画を作るイメージがありつつも、常に変なユーモアを忘れない人だったよなと再認識。とにかく主人公男女の駆け引きが、バシバシと駒を叩きつけながら詰将棋をしているような感覚があり、特にタン・ウェイの男を翻弄しつつ惹きつける仕草の数々が、名人芸につぐ名人芸で、怖かったり笑ったり、やはり目が離せない役者だなと感心しっぱなし。全体の7割方は謎めきつつも笑えるコント、という見方が正しいかはともかくとして、パク・チャヌクの歪みがとてもオープンな形で現れたエンタメだと思う。 ただハングルと中国語話者の間のコミュニケーションのズレみたいな部分はどうしても字幕では伝わらりづらく(どっちの言葉もできるといいんですが)、吹替版がどう処理しているのかは気になるので、比べて観てみたい。
アイディアに貫かれた緻密な映像設計が、白昼夢のごときストーリーを奏でる
「パク・チャヌクといえばバイオレンス&ビザール」という僕のこれまでの低レベルな認識を、本作ははるか雲の上をゆく作家性と芸術性とでものの見事に覆してしまった。この映画には驚くべきアイディアで貫かれた映像設計があり、例えば取調室のカメラワークであったり、双眼鏡で覗いた先に自分の意識が入り込むくだりなど、パク・チャヌク流のギミックを感情表現の軸としながら、一つ不可思議なラブストーリーがおぼろげに形をなしていく。登場人物たちは互いの心を読み合いつつ、なかなか本心を語らないが、彼らの駆使するディバイスはいつも正直過ぎるほど正直だ。しかし一周も二周も回って、やっぱり真相というものは人間の内部にこそ刻まれているのかも。血は流れない。バイオレンスもない。だが時に暴力すぎるほど我々を波で洗い、白昼夢のように茫然とした気持ちにもさせる。ヒッチコックの『めまい』を彷彿とさせる斬新で儚いミステリーがそこにはある。
A Mature Film from Park
Korea's most popular shocking thriller auteur presents his new grown-up film. The tale of a detective and his conflicted affection for a murder suspect, the story is elevated by Park's skill to show with scenes rather than words. Tang Wei's glamorous appearance is the latest on-screen crush. A little long and with many sides, it's not the most streamlined watch from Park; but it is a proper movie.
崩れて壊れる禁断の愛
<映画のことば> 「なぜ、そんな男と結婚を。」 「他の男と別れる決心を、しようと思いました。」 <映画のことば> あなたが「愛している」と言った時、あなたの愛が終わり、あなたの愛が終わった瞬間、私の愛が始まった。 夫の滑落死は自殺と断定されて、被疑者と捜査官という関係は、一応は解消したものの、捜査官であったヘジュン警部は、亡夫の妻・ソレに対する容疑を、心のどこかでは、まだ払拭しきれていないー。 その疑念を心の中に抱きながらも、成熟した関係性を深めていくヘジュン警部とソレとは、いわゆる「大人の恋愛」というものなのでしょうか。 別作品『ヒメアノ~ル』に確か描かれていたような体の関係(体だけの関係?)を、いわば自分自身の中で正当化するために、あえて意図的にに強調されるような恋愛関係とは、似て非なるもののように思われました。評論子には。 文字どおりに、崩れて壊れるような方法を最後にとったのも、ソレの決心の固さを物語るものだったと思います。 佳作としての評価は、疑いのないところだと思います。 (追記) 恋愛で崩れるのは、男の方と相場が決まっているようです。 本作のソレも「引け際」「散り際」はまことに鮮やかですけれども。 我と我の立場とを忘れて、気が振れたようにソレを探し回ったのは、最後には(やっぱり)ヘジュン警部の方でした。 やはり、この方面のことについては、女性の方が、肝が座っているのでしょうか。 (追記) 前々から良作とは聞きながら、未だに鑑賞できていなかった別作品『JSA』の監督さんでもあるのですね。本作のパク・チャヌクは監督は。 セルDVDをはるか以前に購入しながら、未だに鑑賞できていない同作への関心を更のように掻き立てる一本にもなりました。本作は。評論子には。 パク監督は、本作のような「立場の相克する者の間の禁断の(必ずしも恋愛関係には限られない)ぎりぎりの感情」を描く監督さんとも聞き及びます。 朝鮮半島の南北問題というぎりぎりの人間関係を描く作品として、同作を鑑賞、レビューを投稿できる日を期したいとも思います。
パク・チャヌクだったか
アマゾンでなんとなく見始めちゃったから、時勢やら場面転換の分かりにくい映画だなーちぇっ!くらいに見始めてしまった。あんまりにも見づらいから途中止めて、映画の情報検索したらなんとパク・チャヌク様じゃないの。確かに言われてみれはずっと不穏な変な空気流れてたわ。監督の名前を聞いて評価を変えるのも情けないですが、そこから先はこのガクガクした流れもパク氏らしいよねーなんて好感持てちゃったりして。にしてもやっぱり題材がそこまで突き抜けてない。お嬢さんが衝撃すぎたものなー。
心理戦
タン・ウェイ、ラストコーション以来みました。相変わらず魅力的です。 ふたりの恋愛の心理戦が犯罪の心理戦と上手く交差していて、泥沼にはまっていく過程が深い海の様に描かれていました。 チャンが冷めた妻との義理セックスより、プラトニックでもソンに惹かれるのは分かりますね。やはり人間は飽きる生き物ですし、新しい刺激を求めますから。
霧の中に消えていきそうな真実と愛
アマゾンプライムに入ってきたので早速鑑賞。テレビでじっくり観る分には少し集中力が必要で、自分には合わなかった印象。愛とサスペンスのシーソーの成れの果てに見るものは…。 仕事を始めてから思うのは、プライベートと仕事の線引きをどうするべきなのか。この作品で例えるには少し踏み入り過ぎではあるが、実は曖昧であり、自分自身で引く。そこを愛で引こうとするために、危うくも不可侵な世界に落ちていく。それを刑事と容疑者の二項で描くのだから、ただでさえ不穏であり、恐ろしい。 ただ、回想に飛びながら軸を正していく見え方がどうも自分には合わなくて、没入感にどこか欠けた。すれ違う中で見えてくる事実は何処か正しくなれないのは、霧の中に二人を見ているからだろうか。邦題のタイトルも言い得て妙でラストシーンにも納得した。 周りの人が見ても分かるほど狂っていても止められないのが愛の性。疑っていたものは犯人像なのか愛なのか、何度も観たくなる気持ちも分かる作品だった。
愛らしいお二人
この2人は一体何をしてるのだ?と終始ツッコミたくなる、なんだか可愛らしく思えるやり取りばかり。 パク・チャヌク監督作は初めてで(そもそも韓国映画をあまり観ない)、ちょっと構えていたけど、これはとても観やすかった。
「崩壊する」男(と女)の物語
WOWOWで2回も観ちゃった。 タイトルだけでは危うく見逃しそうになる作品。原題を直訳しただけの地味な邦題、映画の中では一度ソレが言うけど、良く出てくる「崩壊」を使った方が効果的だったかも。 サスペンス・ミステリーのフォーマットを取ってるが、コレは恋愛映画。捜査対象を好きになってしまう、というテーマはままある。相棒の陣川君とかね。 ソン・ソレは、美人だけど地味で控え目、だけど何とも言えない色気と蠱惑的な魅力があって魔性の女感ムンムン。プサンのエース刑事ヘジュンも優秀で真面目な愛妻家だけど、どこか脆さがあって、絶妙のキャスティング。日本版を演るなら、仲間由紀恵と眞島秀和かな? わりとすぐに恋に落ちちゃうンだけど、そこからの二人の距離感と、刑事の葛藤、物語が二転三転するところ、長丁場を全く飽きさせない。最後まで予測のつかない展開だった。 韓国語が苦手という設定と、翻訳アプリ、フェンタニル錠、スッポン、不眠症など小物や設定の散りばめ方が上手く効いている。特に印象的だったのが、エンディングにも使われた「霧」。妻の勤務地で後半の舞台でもあるイポの町を覆う霧、最初の事件現場に戻った二人を包む霧、そしてソレがおばあさんに教えた歌「霧」。 最後まで、ソレはヘジュンを愛してたのか、利用してただけなのか、行動に辻褄が合わない気がするけど、大人の恋愛なんて本当に好きかどうか本人も割り切れないほど曖昧で、矛盾した行動も取ったりするので、かえってリアルに感じられた。 この映画、好きだ。
タン・ウェイは美人
山の上から転落死した男の捜査をする刑事が、死んだ男の妻を調べるうちに、その未亡人に惹かれていく。 そして、別の男が殺される事件が発生するが、その妻も同じ女性だった。刑事は「女性への想い」と「彼女が殺したのでは…という思い」により、だんだんと自分を見失っていく……というドラマ。 この刑事が惹かれていく女性を演じているのは『ラスト・コーション』のタン・ウェイ。確かに美人である。 本作では、中国から韓国にやって来たので韓国語はやや下手という設定。スマホを使って中国語を韓国語に翻訳させたりする。現代っぽい。 一人目の転落死は、増村保造×若尾文子の大傑作『妻は告白する』にやや似ているものの、本作はかなり詰めが甘い。 サスペンス/ミステリーにカテゴライズされている作品であるが、個人的には緊張感の持続が足りない感じがしたパク・チャヌク監督作品。
些細な描写がいい
安っぽいメロドラマになりそうな題材を奇妙な緊張感のある作品に仕上げている。 男女の接近を些細な動作やシチュエーションで表現していていい。 ただ、再現の中に人物が登場する演出は混乱しそうになっていただけない。
巨匠の遊び心
パクヘイルのおっとりしたぼっちゃん顔に油断する。が印象に反してギラギラしている。グエムル漢江の怪物の霊前のシーン覚えていませんか。娘が怪物にさらわれて、まだ生きているのだが行方不明なので葬儀をやっている。そこに叔母のドゥナと叔父のヘイルがやってくる。叔父は姪を愛しているけれどだらしないカンドゥ(ガンホ)のことは嫌いなんだ。パクヘイルがすごく巧いシーンだったし大仰な悲嘆が韓国らしくて印象に残った。 パクヘイルには穏やかな顔付きに相反する情念がある。 過激描写を封印したと評されるDecision to Leave別れる決心だがパクチャヌク監督自身はインタビューに答えて── 『実のところ、今回、観客の皆さんから『ずいぶんロマンティックな映画ですね』などと言われ、これまでのパク・チャヌクの映画とは変わったとおっしゃる方も多いことに驚いています。というのも、私の中では、あくまでもこれまでの作品の延長線上だからです。そんなに大きく変わったかな?というのが、私自身の正直な見解なんですね。もし今までの作品から変わったところがあるとすれば、それは感情表現の仕方においてだと自分では思っています』 『過去の私の映画では、登場人物たちは自分の感情をはっきりと、果敢に表現してきました。しかし本作の登場人物は、いつも我慢し、抑制している。自分の感情を率直に表現することを躊躇している点が、過去の私の作品とは違うような気がしています』 ──と述べたそうだ。 パクチャヌクと言えばいびつでまがまがしく暴力的で残酷で猥雑で──というイメージがある。じっさい復讐者に哀れみをオールドボーイクムジャさん渇きやお嬢さんなど主要作品がそのイメージを踏襲している。だから本作のソフトタッチに「過激描写を封印した」という評が付いてまわることになった──わけだった。 が、根底でうごめいている過激さは感じとれる。確かに絵はソフトになっているけれどパクチャヌク節が生きていて、個人的には変わったという感じはしなかった。よって当人の言う『これまでのパク・チャヌクの映画とは変わったとおっしゃる方も多いことに驚いています。』の懐中がわかる気がした。 密度の高い映画で行間に情報量があふれている。映画的遊び心の横溢という感じ。 刑事が蠱惑的な容疑者に惹かれていくという単純な話だが情報にあふれまったく単純な話には見えない。古典的な手触りの映画と思わせながら絵や技巧は斬新そのものだった。 チャヌクはリトルドラマーガールやスノピアサーなどのドラマで海外仕事が増えていたときホームシックにかかって鄭薰姬(チョンフンヒ)が歌うヒット歌謡曲「霧」を聴き、その寂しげな歌詞からこの話を思いついた──とのことだった。 タンウェイが魔性を体現しているがチャヌクによるとLust, Caution(2007)を見て彼女にあてようと書いたものだそうだ。たしかにタンウェイじゃなきゃだめな役だった。 imdb7.3、RotttenTomatoes94%と86%。この回(75回2022年)のカンヌではTriangle of Sadnessがパルムドールをもっていったがパクチャヌクは監督賞をとった。チャヌクの監督賞は完全にうなずける。すべての構図が絵画じみているし、サウンドもいい。洗練された贅沢な時間を過ごすことができる“大人”の映画だった。 表現に共鳴した海外評にこういうのがあった。ガーディアンの評者で── 『危険なほどハンサムな映画撮影、遊び心がありながら正確で、レイヤーと反転した鏡像でいっぱいである。魅惑的で曲がりくねった犯罪ドラマ』
❇️実は難易度高めのコメディーなのか⁉️
別れる決心 🇰🇷韓国 釜山 登山で崖から転落した男。 事情聴取をされる妻。 妻の張込みや聞き込みを担当する刑事と部下。 事情聴取をする内にお互い特別な感情が湧く男女。 ◉60D点。 ★彡正直二人が惹きつけられるカタルシスがやや薄めで感情移入ができなかった。⤵️ ❇️実は難易度高めのコメディーなのか⁉️ 🌀こんな恋本当にあるんだろうか⁉️ それともただのコメディーなのか⁉️ サスペンスなのか?ラブストーリーなのか?コメディーなのか?絶妙に混ざり合い、異質な作品に感じた。 🟢感想 1️⃣前半やや退屈。中盤伏線回収でラストへ 2️⃣中盤に展開はあるものの、焦らし、焦らされる。★彡なんかどうでも良くなってくるけど、結末は知っておきたいが為に鑑賞。 🤫🤔🥱🫂📲❤️🩹
何も伝わってこない
私の感性がおかしいのかも知れませんが、今までに観た映画でこれほど何も伝わってこなかった作品は久しく無かったと思います。普段はどんなにつまらない作品でも、「ここが悪い」とか「こうすれば良かったのに」とか、悪いなりにも何かしら感想が出てきそうなものですが、この作品からは何も伝わってくるものが無く、物語の展開に全く興味がわかずに約2時間ボーっと画面を眺めてました。なので観終えたばかりなのに、あらすじすら覚えていません。恐らくは、主人公の二人に共感するものがないというか魅力を感じなかったのだと思います。 それから、作品の善し悪しには関係ありませんが、韓国映画を観ててよく思うのは、登場人物の名前が頭に入りづらく、セリフの中で名前が出てきても、誰が誰だか分からなくなります。
コレは、ラブストーリー
サスペンスというより、ラブストーリー。観ていて、事実なのかどちらかの空想なのか妄想なのか、よくわからなくなる。 被疑者に好意を持ってしまう刑事、結局真相がわかった段階でも、見逃している。ダメでしょ!韓国映画あるあるの駄目刑事映画か。とも思えてきた。一応自殺ということで解決したとはいえ、被疑者として取り調べまでした人物とデートしたり、お互いの家に行き来するなんて、どうなの?好きになってもそこは理性で抑えないと。 別れることにして妻の元に引っ越したのに、そこに再婚して現れた彼女。その新しい旦那さんも殺される。実際に殺してなくても殺されるように仕向けているし、犯人の母親、殺してるってことだよね。とんでもない悪女。 ラストの彼女のけじめの付け方はなかなかスゴい。ただスコップではなくバケツなのね。潮が満ちて砂がながれていくなきを必死に探す場面。なかなかいいラスト。 もう2回ほど観たほうがこの映画は面白いのかも。ただ繰り返し観るエネルギーはないな。
情景ごと後を引く危ういもの同士のとりあわせ
本作はとにかく観ていてじれったくてしょうがない。 とっくのとうに取り調べの刑事と容疑者の関係から、男と女の精神状態になっているのに。 どこかで男として見られたい、女として見られたいと思うから、お互いの立場を忘れてしまう。 そこを奥手を装って、奇妙な均衡を保とうとするから、いらつくのである。 言ってしまえば、己の職務を忘れた刑事と夫殺しの容疑をのらりくらりとかわす、容疑者にすぎないのに。 でも、パク・チャヌクはそこを執拗に描くのである。 執着か愛着か、愛情か恋愛か、その微妙な揺れを描いてやまないのである。 そこに人間の本質が見えてくるかのように。 男を演じたパク・へイルは、「殺人の追憶」で演じた都会的な刑事がそのまま年取ったような危うさ。 女を演じたタン・ウェイは、「ラスト・コーション」の妖艶な女スパイさながらに、魔性の女の危うさ。 危ういもの同士のとりあわせは、いらつきとじれったさのなか、情景ごと後を引く。
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