「多少無理してでも多くの人に観て欲しい」逆転のトライアングル ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
多少無理してでも多くの人に観て欲しい
長尺で3つのパートに分かれているが、どこを取っても面白い。
パート1はモデルの卵の青年と売れっ子インフルエンサーの彼女のレストランでの支払いをとっかかりにした痴話げんか。男女平等を巡って微妙にすれ違う2人の価値観。高級ディナーに誘っておいて男が払って当然って態度の彼女に抗議すると、このホテルに泊まれるのは私のおかげだしシャツもプレゼントしたし、ただ対等にいたいだけ、と主張する自称フェミニスト。どっちもどっち。どっちかと言うと彼に同情。
パート2は豪華客船。ロシアの肥料会社経営者、英国の非常に品の良い穏やかな老夫婦は手榴弾の会社経営者、と、売れっ子インフルエンサーなんか足元にも及ばないヨーロッパ各国の超金持ちが乗船。しかし船長は酒の飲み過ぎで部屋から出てこない。仕方なくキャプテンディナーは海が荒れそうな木曜日にやることに。クルー達はワガママな乗客のおもてなしに精を出すが、金持ちは、格差なんかない、と仕事中のクルーをムリにプールに入れたりする。船が大揺れする中、超豪華ディナーが始まる。しかしみんな船酔いしてしまい、殆どの乗客が嘔吐を繰り返し、ディナーどころではなくなる。ロシアの資本主義者とアメリカの共産主義者(船長)のやり取りも面白い。そんな中、海賊に襲われて船が爆発、難破する。
パート3は漂着した島。モデル&インフルエンサーの他に金持ちロシア人と1人参加のもう1人の金持ち、クルーの女性キャプテン、「雲の中」しか喋れない半身不随の女性、黒人のクルーと、トイレ掃除係のチームの女性だけが生き残る。ここで、トイレ掃除係の女性が生存能力を発揮し、魚を取り、火を起こし、調理をするという彼らができない全てを彼女が行い、ヒエラルキーが逆転する。他の全員にキャプテンは自分であると認めさせ、モデルの彼を毎晩自分と一緒に寝るように指名する。
いつ助けが来るか見えない中、インフルエンサーが、島の中に探検に行くと彼と一緒に寝ていた元トイレ係に言う。島の奥の岩山をどんどん進むと、リゾート用のエレベーターがあるのを見つける。これで助かったと喜ぶが、元トイレ係は現実社会に戻る=またヒエラルキーが下になるということ。背を向けている彼女を撲殺しようと思うが、彼女に不意に「貴女にはお礼がしたい、私の付き人になって欲しい」と言われ、怯む。一方、モデルの彼は、2人を追って島を走っていた。
2時間半でも中弛みなし!豪華客船に乗るような勝ち組の人達、それを目指している人達への強烈な皮肉。でももしかしたら、渦中の人達は自分のことを皮肉られていると分からないかもしれんな、と思った。