「いつもの希望が感じられなかった」トリとロキタ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
いつもの希望が感じられなかった
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ダルデンヌ兄弟といえばベルギーで暮らす弱者に寄り添う作品を作り続けてきた監督だ。
時代の変化だろうが、近年では移民に焦点が当たることが多い。本作も正にそれだ。
不法移民であるトリとロキタは、二人の善し悪しは置いておくとして、ベルギーで厳しい生活を強いられている。
移民審査は通らず、ブローカーからは金をむしり取られる。そして祖国に帰ることもままならない。
基本的に善人である2人は悪に染まり切ることもできず、上にも下にもいけない、フワフワと浮遊する綿毛のようだ。八方ふさがりなのである。
血の繋がらない2人は兄弟を自称するが、本当に兄弟のようなのだ(ここの理由付けや説明はないので親愛の根拠は薄い)。
ただ一緒にいたいだけ。それすら叶わずなぶられ続ける姿は痛々しい。
ダルデンヌ兄弟は好きなのだけれど、その理由として、基本的に本編内では悲劇的なことが連続していても、ラストにフワッと優しさや希望が見えるからだ。
それなのに本作ではその要素が薄かった。僅かな明るさを感じることが出来なかったのが不満だ(ダルデンヌ兄弟は希望を見せたつもりかもしれないけれど)。
もしかしたらダルデンヌ兄弟の作品で初めて作中で人死が出たからそう感じたのかもしれない。死んでしまっては終わりだ。
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