劇場公開日 2023年3月31日

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「装飾を削ぎ落とし、二人の動線と感情を見つめ続ける」トリとロキタ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0装飾を削ぎ落とし、二人の動線と感情を見つめ続ける

2023年3月31日
PCから投稿

ダルデンヌ作品はいつも飾り気がなく、素朴な演出によって形作られているかに見える。この監督の凄さはまさにそこに尽きるのだろう。つまり、劇映画というフィクションでありながら、我々の意識は現実と地続きの世界であるかのように映像の中へと引き摺り込まれる。それも強引ではなく、いつの間にか、自ずと境界線を超えている自分に気づくのだ。今作はさらに演技経験のない二人を起用しており、ただひたすら彼らの日常や行動をカメラが見つめる。全編を通じて全く説明的な言葉や描写はないのに、なぜこれほど状況や感情がダイレクトに伝わってくるのか。血のつながりのない二人が互いを支え合い、一緒にいたいと思い続ける気持ちになぜこんなに胸が締め付けられるのか。技巧を微塵も感じさせず、それでいて我々の意識を見ず知らずの二人に寄り添わせるこのタッチ。ダルデンヌ作品を観続けて20年以上が経つが、最近その凄さがようやくわかってきた気がする。

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牛津厚信