「テイモアらしい映像表現が散りばめられている」グロリアス 世界を動かした女たち 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
テイモアらしい映像表現が散りばめられている
ジュリー・テイモアといえば有名な映画監督であると同時に、舞台演出家でもある。かつて「ライオン・キング」などで鳴らしたその鮮烈な手腕を、活動家グロリア・スタイネムの半生を描く本作でどう発揮するのか。私の興味関心はその点に集約されていた。特徴的なところは3つ。すなわち、グロリアの人生を少女時代から描きつつも、時系列ではなく各々の世代が入り乱れて点描されること。多くの場面で車が用いられ、とりわけバスでは「それぞれの世代の私」が乗り合わせ、言葉を交わすこと。また時折、エキセントリックとでも表現したくなるほどの幻想的な心象風景が投下されること、である。試みの全てが成功しているわけではないが、しかしどの場面も独創性にあふれているのは確か。グロリアという人間を表面的に描くのではなく、彼女の内面と外面とを行き来しながら、極めて立体的に人物像を構築していく。テイモアらしい視座と表現性がそこに凝縮されていた。
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