リバー、流れないでよのレビュー・感想・評価
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SすこしF不思議な タイムリープコメディ映画
2分のタイムリープを36回、しかも、長回しで実際に測りながら撮影しているというこの作品、もはや新しい映画の手法だと思う。
そんなにマニアックなタイムリープモノなのに、笑えてちょっぴりグッとくる。
しっかりエモい作品に仕上がっている。
ヨーロッパ企画上田誠さんの脚本技が光る。
わずか2分、されど2分である。
劇団の真骨頂を見せてくれる、ヨーロッパ企画役者さんたちの演技が抜群によい。貴船ふじやという箱庭の中で、まるで舞台を観ているようだ。
2分を繰り返しながら、すこしづつ前に進む感じもよく、いつしか彼らを応援している自分がいる。
「あ〜あ、もう2分たっちゃうよ、ほら〜」
ってつぶやいちゃう。
京都貴船というロケーションも最高によい。
京都の劇団だからこそ、できた協力体制だと思う。
大雪という自然も加わって、まさに奇跡の映画になった。風景だけでもすごい。
この辺は、長回しも含めて前作のドロステから続く、山口淳太 監督の腕も確かだ。本当に完成して良かった。
なにより、視聴後感がとてつもなく良い。
(これ、僕が映画を作るときに、一番優先していたことなのだけど。)
SF物にありがちな、難しさはこれっぽっちも感じないのだ。
最後まで観ると、なぜ、2分がループしていたのかがよーくわかる。
「ああ、そうだったのか!」
となる、このなるほど感、これが大事だと思う。
ダメな作品って、観客置き去り設定ってよくある。そういうのが全然感じられない。
素晴らしい👍
この辺は、サマータイムマシンブルースやドロステなど、時間設定を作り尽くしている上田さんだ。
あえていうなら、
SすこしF不思議な
タイムリープコメディ映画だ。
上田さんのF先生リスペクトは、前作のドロステを観るとよーくわかる。
もっともっと広がって欲しい。
まだの方は是非とも一度観てほしい。
そして最後に一言だけ、
久保史緒里ちゃんが良いー😆
観た後に理解してね。
「みた?」「みた、みた!」という映画
上田誠さんの技が冴えてるね。
2分間でタイムループするんだけど、登場人物全員にタイムループした感覚が残ってるのが発明だね。
その設定で何を描くかというと、主人公の恋愛がメインになってくる。
周りの人の変化も少し入れて。
「タイムループするって分かってたらこうだろう」っていう小技がだくさん出てきていよね。
ラストでタイムパトロールの女の人が縁結びのお守りを見せるけど、あれは「地球と月の遠距離恋愛がうまくいくように、日本とフランスの遠距離恋愛を成就させた御先祖様のエピソードにあやかってる」っていう表現に見えたな。《四畳半タイムマシンブルース》だね。
《カメラを止めるな!》以降、「新しい構造の作品を観たい」という要望が多くて《ドロステの果てでぼくら》《MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない》なんかが出てきたね。
それぞれ面白いから観るというのもあるけど、「みた?」「みた、みた!」と言うために観てるところもあるね。
それが新しい鑑賞体験として良いのかどうかは、少し気になったよ。
可愛らしい映画
上映規模が非常に小さい割に評判は良いこともあって、日曜の名古屋市内の劇場はほぼ満席だった。
他人の笑い声が気になるタチなので、コメディタッチの作品は苦手、という前提で感想をお読みください。
2分という短いタイムループで、当事者達が全員それを自覚している・記憶が残るという辺りや、「次のターン」「初期位置」という言葉のチョイス含め、前半は多少興味をひかれた。
ただ、最終的に私には「それだけ」って感じ。
演劇が元にあるということもあってか、いかにも、なコメディ…というかコント的演技が気になってしまうし、ループによって雪が降り出したり積もってたり全然寒そうに見えなかったり、と順不同。作中では「世界線が違う」っていう程度の説明があるけど、これが物語として意図されたものなのか、ただの撮影中のアクシデントなのかもよく分からない(多分後者なんだろうし、それも「オモシロ」の一つとしてアクセントになると踏んでたんだろうけど)。私にはこういうコトがすごくノイズになった。
主人公と逃げ出そうとする調理師の男性が「フランスに行きたい」って話、特に具体的な説明もないけど、結局この物語の謂わば発端なんだから、もう少しちゃんと丁寧に描写してくれないと、この二人がただ混乱を招いているだけに見えてしまう。(冒頭で「何かある」と匂わせてるだけに、その後を丁寧にして欲しかった。)
全体的に、この作品では登場人物がそれぞれ「この人はこういう役割」みたいな『型』を演じているだけで、そこに「人間がいない」感じがして、起きるコトも一つ一つが単なる「シーン」として消化されていく。結果として私は誰にも心を寄せることができなかった。
あの冒頭に出てくる美少女も、もう少し出し方があったんじゃないかなあ。
あんなに印象的に登場したら、「いつ出てくるの?」って思って待つのが当たり前で、そうなると今目の前で進んでいるドラマが軽視されてしまう。
「彼氏が○○にいて…」
こういうところのチョイスも、個人的にはセンスが古いと感じる。
せっかくの「貴船神社」ももっと生かせたんじゃないかな。
幸い、主人公の女性が憎めないタイプのキャラクターだったので全体を緩和してくれてたし、そのお陰で「可愛らしい映画だな」って印象にはなっている。
決してつまらないとは思わない。
長尺のコントドラマを観るつもりだったら楽しめそう。
上田誠はまだまだループすると思う
面白かった。いわゆるエンターテイメント自主映画なのだと思うけど、タイムマシンもの含めて「時間を繰り返す」ドラマは日本一、いや世界一こなしているはずの上田誠が京都を舞台にまだこの手もあるよ、とあえて自主映画スタイルで臨んでいる感じ。
なんといっても、メインとなる旅館、川、神社、半径50メートル?くらいの起伏を使って飽きさせない。この手のものなら屋外やらないほうが整合性つけやすいのにあえてか道を挟むあたりが気軽さを感じる。というか、その場所があったから発想されたストーリーというか。みんなで楽しく作ってる感じもよかった。
鞍馬からタイム・ループが出でまして、なお苦労放題…
タイム・ループするにことかいて2分とは!「ドロステ」も2分だったし、何かこだわりがあるのだろうか。カップラーメンにお湯を入れても、できあがらないうちに元に戻る短さだ。
ヨーロッパ企画の上田誠氏は時間SFがよほどお好きらしく、名作「サマータイムマシン・ブルース」がその代表だが、あちらに比べると「ドロステ」も今作もこぢんまり感は否めない(時間的かつ空間的かつキャスティング的に)。でも、突拍子もないアイデアにこだわっているところは嬉しいし、今後も追って行きたい。
ヨーロッパ企画の舞台も何度か見に行ったけど、こうして映画のフィールドに手を広げることは、一般の人にとって接する機会が増えるのでどんどんやればいいと思う。
たるいオープニング
面白かったですよ。
ただ、あのたるーいオープニング。
人物紹介なのはわかるけど、それにしては、たるかった。
すぐ「ループのシーン」からでも皆んなのキャラ、わかるけどなー。
最後、実は、、、、のオチが欲しかった。
ループ酔い
ヨーロッパ企画が大好きなので、舞台も映画も欠かさず観るのですが、ここ数年の上田さんの脚本は、ちょっとループが過ぎます。
面白いし大好きだけど、今回は映画としてまとまってた感あったけど、それでもちょっとループ酔いしそうです。。
されども、理子さんのお声や演技は可愛くていつも素敵だし、いつメンの呼吸もさすがです。
ヨーロッパ企画の次のステージ(舞台という意味ではなく)が見たい!
声出して笑った!舞台のような映画です。
「カメラをとめるな」「エブエブ」のように、あんまり深く考えず、流れに乗っかって楽しむ映画かと思います。
出演者の皆さん、本上さん以外お初でしたが、皆さん芸達者なのは分かります。
舞台俳優さんかな?
2分間のループでどこまでできるかという意欲作。
ブレーンストーミングでアイディアを出し合ったのでしょうか。
シチュエーションは戻るけど、記憶はそのままという設定が面白い。
人間、追いつめられると、色々やらかしちゃうなあ。
シアター内はリラックスしていて、開始15分くらいから笑い声があちこちから。
私も、声出しOKの応援上映以外では、久々笑ったりツッコミを入れました。
コロナの時は、上映して下さるだけでありがたい、コメディでも息を殺して観てましたから。
ヨーロッパ企画さん、舞台も上演していると帰宅後に知りました。
一度、舞台を観てみたい。
そう思わせてくれるほどには、出演者の皆さん、魅力的でした。
映画の舞台である貴船は、1年通して本当にいい所なので、一度足を運んで下さいませ。
今なら、竹の流しそうめんや川床など夏の風情満点です♬
1分でも3分でもダメ
上田誠氏率いる
「ヨーロッパ企画」の新作!
京都の老舗料理旅館、貴船ふじやが舞台です。「元祖川床発祥の宿」だそうで、まずその立地に驚かされました!
本当に目の前すぐに貴船川!!
旅館の佇まい、貴船神社の鳥居の朱色、水神様の伝承、周りの自然、漂う空気感が現実ではないような幻想的な空間に魅了されます。
ここでなら、時間の概念が狂ってもおかしくなさそうです。
そこで繰り広げられる2分間のタイムループから抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディ。
原案、脚本の上田氏。現在公開中のマリオの日本語版台本制作にも参加しているそう!字幕verも観たくなる!
さて、
タイムリープ、ループものを得意とするヨーロッパならではの作品です。練りに練られた脚本を、いつもの舞台から単に映画という表現方法に置き換えただけではなく、舞台では表現できない部分を全て補完した仕上がりになっていて満足度が高い。
寄ったり引いたりして「2分」という時間を追いかけるカメラワーク。ワンカット撮影の為、実際に皆が同じ目線でその時間を共有できる。ループするその2分を何ターンも見せられ、やがてこちらもその2分の感覚を掴んでくるのが面白い。
そろそろ時間じゃない?!
又、初期位置からか、、とかw
全員が前のターンの記憶を残している事も鑑賞者を巻き込む上手い仕掛けだ。
現実の2分って、、
例えばカップラーメンを前にじっと待つ3分中の2分。長い。
朝の二度寝したい2分なんてまばたき1つではい終了。
こんなに2分を意識したのは初めてだ。
何度ループしてもその時間内での出来事から少しでも前に進もうとしている。それって実は過ぎた時間は戻らないって事かな?と思ったり、、
時の流れってフシギで何とも愛おしいって思ったり。。
でも結局何が言いたいかって「天狗じゃない!」って事ですw
ラストは上田さんなので、らしい??ヒサメのタイムマシーンの故障によるパラドックス回避ってことでループが起きたんだってさ(^。^)
ミコトやお客さん、作家先生などのせいにせず解決で、そこは良かったのではないかな。
ところで、、
ヨーロッパ企画の舞台を二度観た事があるのですが、、
カーテンコールに出てくる役者さん達のオーラのなさ!!挙動不審さ!!に、もう笑いが止まらずww
さっきまでのオーラどこ行ったw!ってツッコミ、大丈夫だよぉ〜皆んな味方だよぉ〜と思った記憶があります(^ ^)
そして推しの永井さんと本多さん!
今回は番頭さんだった永井さん。
神社への階段をダッシュで上がる時、カメラさんに追い抜かれていておもしろかったけどw
「闇金サイハラさん」の「宇津井」が気持ち悪くて大好きな私からしたらちょっと物足りなかったですw
そして本多さん出てなくてかなし丸でした( ; ; )
最後に!!なんと貴船ふじや!!
藤谷理子さんのご実家らしいですよ!!いや〜ビックリ!!
ヨーロッパ好きな人もそうでない人も楽しめます!慌ただしい2分間を何度も体験して下さい!オススメ🎵
今回もとても良かった!
「ドロステのはてで僕ら」も傑作だったが、本作もとても面白かった!
良くこんな設定を思いつくなと感心。
ヨーロッパ企画のファンであるので、とても楽しめました。
藤谷理子さん始めキャストが素敵です
よくこれを映画でやってのけるな、と
駆け込みレイトショーで、パートナーと鑑賞
大好きな上田さんの作品を是非見せたい!と、内容は説明せずに大きいポップコーンとアイスティーを一個ずつ購入して映画館へ。
2分という特別短いループを何回も繰り返すタイムループ映画。大ファンであるヨーロッパ企画制作ということを差し引いても、楽しめた映画でした。
とにかく世界が狭い!!!でも広い!!!!!演劇かよ!!!という褒め言葉。2分の間で動ける範囲で展開する世界。多分これ演劇だったら、観客はおんなじ目線を見るから飽きちゃうけど、映画だからこそ、いろんな目線で見れて楽しめんだろうなと思いました。寄ったり引いたり、景色を見せたり手元を見せたり……!
撮影中の天候がコロコロ変わるのよかったですね。雪の貴船美しかった。
そして安心の時空パトロール。毎回出てくる安心材料、あぁパトロール出てきたら安心安心的な。
「タイムループに巻き込まれたらどうしたらいいか」の指南映画でもありますね。私は作家さんように幼子よろしくはしゃいでいたいと思います、誰か時空の歪みを直してください。
僕の死に様綺麗だった?
昨年は、同じく上田誠のタイムリープ「四畳半タイムマシンブルース」、そしてタイムループの大傑作「MONDAYS」、そして名前とパッケージからは思いもしなかった良作「カラダ探し」などが公開され、最近映画界でブームなタイムリープ・ループもの。本作はちょっと完成度が低かったけど、ヨーロッパ企画なだけあって、しっかりと楽しませて貰いました。
2分間をタイムループするというアイデアはめちゃくちゃ面白く、最初は心掴まれて大興奮なんだけど、10回過ぎたくらいで少し飽きる。近藤芳正のシーンは結構新鮮で、2分間のタイムループでしか出来ない面白味があるけど、それ以外は割と陳腐。天候が故にループしている感が薄いのも残念。初期地点がしょぼい主人公だから、尚繰り返されているように思えない。熱燗から湯気が消えたり、雑炊が増えたり、そんなシーンが見たかった。予算的に難しいのかな。
でも、およそ90分間、観客を絶対に飽きさせない。誰しも、もう一度やり直せたらとか、時が止まれと思ったことはある。だけど、それが本当に起こったら?色んなパターンで一風変わったこのタイムループにハマってしまった人の様子を見せてくれるから、すごく楽しい。確かに、1度死んでみたいし、背徳感を味わったりしたいよね。とっても人間味があって、いい物語です。
最後はSFに走ってしまって、なんとなーく予想出来てたけど、この終わり方はちょっと物足りないし、無理がある。皆の理解度が高すぎて、違和感感じちゃう。でも、久保史緒里はやっぱり良かった。なんだか、普通じゃない、独特な魅力があるよね。幽霊に引き続き、好キャラでした。
印象に残る場面は少なかったけど、「四畳半タイムマシンブルース」を思い出させるドタバタコメディがとてもタイプでした。旅館、行ってみたいな。
限定的な設定にタイムループの魅力がつまっている
タイムループものの魅力って、同じ時間をループしながら少しずつ違う行動を取っていくことでどんな違いに発展していくのかを楽しむことにある気がする。
温泉旅館で発生したタイムループ。しかもたった2分。タイムループしてると言っても何もできやしない。このとっても限定的な設定をうまく活かしていた。2分で元に戻るといってもいつ戻るかわからないから、感情的にも物理的にも破壊的になってはダメ。途中そう諭した男の意見は正しい。でも、人を傷つけたり、普段できないことをしてしまう人の発想もわからないでもない。そんなトラブルも発生しつつ、うまく結末に到着する流れはさすが上田誠の脚本だ。
地域限定のタイムループってのもなかなか斬新。無理のある設定なんだけど、「時空が歪んでいる」で押し切ってしまうのは少し笑えた。たしかにロケの関係で生じてしまう雪なんかの環境変化は「時空の歪み」とでも言わないと違和感しかなくなってしまうもんな。そういう意味でもとても舞台っぽい設定と話だ。ただ、実際に舞台化するには苦労しそう。2分ごとに初期位置に戻る演出が相当難しい気がする。
いずれにしても相当楽しかった。もちろんそもそもタイムリープものが好きだから加点してしている部分もある。最近日本映画でタイムループものの傑作が続いている。嬉しい限りだ。低予算の中、限定的なシチュエーションでタイムループを描く傾向。さぁ、さらなる傑作が生まれるのか?楽しみだ。
これが「よくできた脚本」……?
前作『ドロステ』が楽しめたので観てみた、ヨーロッパ企画の演劇は未鑑賞の人間です。
いや、この作品はダメでしょう。擁護できない。普段はレビューなど書かないのですが、あまりの未消化な内容に腹が立ったので。
アイディアそのものは面白くなりそうで、短期間でのループの連打は見たことのない感覚があり悪くなさそうなのだけれど、まず冒頭からリアリティラインをどのあたりに置いているのか不可解な発言や行動を登場人物が連発。
「コメディだからそういうもの」ではない。コメディだからこそ、奇妙な状況に困惑している人間に感情移入しなければならず、多少変わり者が出てくるとしても、人間として理解できる心理の流れと「普通の人間のリアクション」はきちんと押さえていなければならない。
状況がおかしいのだから、人物がおかしかったらダメなのだ。
冒頭から大人たちが即座にタイムループなどという破天荒な状況を速攻で受け入れる、老舗旅館の従業員にしては失礼すぎる物言いを客に繰り返す、バスタオルを巻いている程度の裸体の男性を見ただけで大人の女性が照れて視線を逸らす、というところで「?」だったが、一番不可解だったのは中盤の「逃避行」の下り。
ループしてるのだから逃避行しても意味ないし、意味のない行動を思わず取ってしまうほど主人公が追い詰められているわけでもないし、百歩譲って逃避行するにしても全く主人公が真剣にやっていないので、展開として緊張感も必然性もない。
そもそも芝居全体がいわゆる大仰な「舞台演技」なので、大したことない事態にもいちいち大袈裟に感情表現していて感情移入の妨げになる(人前でこんな振る舞いをする大人は普通いない、というレベルで)。
舞台上でやる分にはこれぐらい強めでもいいかもしれないが、あくまでこれは映画なのだから、演出の段階で加減したりはしないのだろうか。
そして主人公が実は原因だった(のかもしれない)という状況になった時点で、主人公が切実に「このループの中にずっといたい」とまで感じさせるだけの感情的・状況的積み重ねがない(とってつけたような理由が提示されるだけ)ので、主人公の動機に共感できない。
これぐらい、冒頭から少しずつ振っておけば(主人公たちの若干の不和・軋轢とか、待ち受けている未来のしんどさとか、それに対してどう感じているかとか、逆にループそのものを主人公だけやけに楽しんでいるとか)済むことでしょう……。
考えてみればそもそも、物語の構造として、どの登場人物に関しても「解決すべき課題」のようなものが冒頭でほとんど提示されていないのが気になる。
ループを題材にした物語を描くなら、ループが始まる前に、その登場人物たちが抱えている問題(『恋はデ・ジャブ』なら主人公の人間性の問題であるとか)が提示されて、ループという経験を通してそれが解消される、という流れになるはずなのに、ループの前には全くそういう問題が描かれていないのは単純に脚本の甘さでしかないと思うのだが……。
登場人物ほぼ全員が、「ループから脱出する」以外特に大した問題を抱えていないので、物語を通してそれが解消されるカタルシスが皆無に近いのだ。
作中でほぼ唯一緊張感が生まれたのが「死」に関わるアイディアが出てきたあたり。ここらでトーンが変わるなら、とも思ったが、作家性的にそういう方向に真剣に物語が進むはずもなく、一瞬ピリッとした流れもなんとなーくで解決していってしまう。
「何度繰り返しても崖から落ちてしまうタクシー」なんて面白そうなネタも口頭だけで消化されて、「崖に落ちずに済む方法見つかったらしいです!」って、そのくだりもいらんだろう! 包丁で刺し合いになった人はどうなった!
考えてみれば、登場人物全員の記憶が維持されている以上、このループのシチュエーションは、孤独や前進できない寂寞感を描くのではなく、シンプルに無限地獄でしかないはず。それ以外は、何度も初期位置に戻される以外は普通の現実と何も違わないのだ。
だから、『ハッピー・デス・デイ』のように避けがたい死を回避する、というプロットになるのなら転がしようがあるが、それ以外はそんなに盛り上げようがない。他の人たちも同じ不安を共有しているし、ループ自体は自分たちではどうしようもない問題なのだから。
そして、最も盛り上げられるはずのループの解消作戦については、ビールを数本持って行くぐらいであっさり解決。漁師の銃が必要というのも本当にとってつけたような理由づけで、そもそもあの人物は必要なのか、と……。
さらに、SFやファンタジーを描く場合、重要になるのは「この特異なシチュエーションでしか描けないような内容になっているのか」というところもあるだろう。
ループを描いた無数の名作群は、「変えることのできない運命はあるのか」「人生における選択に人間はいかに向き合うべきか」といった問いかけに、真摯に向き合っていたはずだ。つい最近の『ザ・フラッシュ』もそうだった。
この作品は何を描いた? 「やっぱり前に進まなきゃね」? そんなこと、わざわざこんなシチュエーションを描かなくたってわかっている。
別に原因が未来人でもタイムパトロールでもなんでもいい。低予算で外の景色を一貫させることができなくたって仕方ない。百歩譲って、芝居が舞台から離れられないのもいいだろう。
それ以前の、脚本の物語としての盛り上げ方、感情の流れの作り方が全くなっていない。「二分間でループしたら面白いんじゃない?」から先が全然出来上がっていない(実際、思いついたときは面白そうな気がしたけれど、いざ執筆してみたら意外と難しくて持て余したのではないか?)。
SFやファンタジーとしての練り込みも、テーマの掘り下げも、全く足りていない。
別にCGが使えなくても超有名俳優が出せなくても、なんとかする方法は脚本レベルでまだいくらでもあったはず。映像的な驚きや意外性もあった前作と比べても、大きな後退だ。
テレビでさらっと見たショートドラマぐらいならこの程度でも別にいいかもしれないが、移動時間込みで3時間くらい休日を費やさせて、2000円払って、『ミッション・インポッシブル』や『怪物』、『RRR』と同じ土俵で上映しているのだ。細かいセリフのネタでクスッと笑わせるぐらい(それにしたって少ない)でよしとされては困る。
腹が立ったらこれぐらい言わせてほしい。前作は面白かったから、次はもっと磨き上げた脚本で勝負してほしい。
2023年7月5日追記・
○さんのコメントへ。
コメント、ありがとうございます。まず、
>人間の感情の機微やユーモアが理解できない人が、自分の理解の外にある表現を「映画はこうあるべき」という勝手な思い込みで断罪してしまう、あまりに思い上がったコメント。
この部分は明確に私に対する人格攻撃なので、やめてください。映画.comの投稿時のガイドラインをよくご確認ください。
>「リアリティ」の基準にせよ、「演出の必然性」にせよ、全部あなたの感性の匙加減次第だという事に気づいているのでしょうか。
>要は「自分は嫌い」と「そのように表現してはいけない」の区別が付いていないのです。
その通り、全ては観客の感性の匙加減であり、私はこの作品を傑作と感じている人を否定するつもりは全くありません。おっしゃる通り、「自分は嫌い」だったので、なぜそう感じたのかを言語化しただけです。それがつまり、レビューであり、批評です。
>映画を見ることが「自分の中で勝手に作り上げた名作の条件とのパターンマッチング」に成り下がっている人、居ますよね。
上記の通り、「なぜ自分はこの作品に腹が立ったのか」ということを言語化したので、当然自分が過去に鑑賞して、自分が良いと感じた作品群との比較になります。比較対象が名作かどうかは関係ありません(『『ザ・フラッシュ』はだいぶ批判されてますね)。批評とは一般的にそういうものです。
私のレビューが誤っている=私が誤読しているのなら、私に対する人格攻撃ではなく、どこがどう誤っているのか、論理的に反論してください。
あなたが「良い」と感じたし、全ては「感性の匙加減」の問題なら、それも結構です。私は「よくない」と感じたので、その理由を筋道立てて書きました。
最初のレビューに書いた通り、お金を払い時間を費やして鑑賞した以上、私には賞賛する権利も批判する権利もあります。
全206件中、141~160件目を表示