「世界線のズレ・・・じゃなく、世界観のブレが課題」リバー、流れないでよ やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
世界線のズレ・・・じゃなく、世界観のブレが課題
貴船神社の周辺にある老舗旅館の女性従業員の神頼み・・・か何か理由は良く分からないが、ある起点から2分間、時間が巻き戻され、ひたすら繰り返される世界(といっても貴船川周辺のみ)に閉じ込められた人々の群像劇です。
ポイントとなるのは、記憶は継続する点です。
人間関係含めて「やっちゃったら、元には決して戻らない、無かったことにはならない」ということ。展開される場面、範囲はほぼ一緒だが物語は貴船川のごとくサラサラと流れているので、そこは鑑賞者も設定の認知に少し戸惑うところでしょう。
メインの出演者が劇団員さんだからでしょうか、若干オーバーアクションではありますが、それぞれの癖の強いキャラクターが生き生きと表現されており、彼らの本気度高めの掛け合い自体にクスッとされる笑いが内包されているイメージで最初は好印象でした。
しかし、「2分間の繰り返し」は、その世界の住人だけでなく、鑑賞者にとってもストレスフルな体験だったのは否定できない事実です。その世界に没入した結果かもしれませんが中断を余儀なくされる、って人ごととして笑えませんでした。
さらに物理的に初期位置に戻るという設定が仇になり、必然的に物語が動かない移動経路を1分くらいは見せられるはめになるのが本当にマイナスポイントでした。つまりテンポが悪いってことです。
また、貴船神社周辺だけ2分間が繰り返されるはずなのに、降雪だけじゃなく時に積雪もあったりすることを「世界線のズレ?(理系君いわく)」とおっしゃってましたが、まあ、雪景色の貴船神社周辺は風情があり美しいので、とってつけたこのズレは許しましょう。映像的マンネリ感も回避できていたし。
しかし、以下に提示した鑑賞者が戸惑うような「世界観のブレ」はちょっといただけません。
アングラ演劇(失礼)にありがちな混乱、カオス、狂気の表現として「自殺2件、殺傷?1件、交通事故多発?」はなぜ組み入れた?と思いました。記憶は残るからこれは今後もトラウマかつ修羅場・・・決して無かったことになはらない。
正直この映画の優しい世界観には馴染まないと思いました。見せなければ良いってことじゃないです。まあ実際、リアルな流血シーンもありましたし。
この部分にこの作品の決定的な欠点である世界観のブレ、定まらないふわふわした倫理観を強く感じました。
だって、旅館の障子に穴あけて悦に入る、またバスタオルしっかり巻いた半裸の男性から女性が逃げ回る優しい世界観ですよ(笑)?
なんでもアリの上限を「死や凶器による加害」に置くなら、もっとはちゃめちゃを期待するし、逆に映画のレーティングを考慮してそこまでする覚悟がないなら、綺麗にまとめてそんなシナリオにすべきじゃないです。
映像的には非常に綺麗、演技も良いのに、何か中途半端、主張がブレブレの印象が強く残る作品となりました。