「適応力」リバー、流れないでよ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
適応力
よく練られた脚本だった。
ある時を境に2分間のループを繰り返す。
なのだが、当時人物達の記憶は更新されていく。
再び時間が動き出すまでの人間模様が描かれていく。
色んなパターンが用意されてて、恋愛やサスペンスやバイオレンスや、勿論コメディ要素にも溢れてる。
ちょっと1回がっつりバイオレンスに振っても良かったように思う。
登場人物達が驚く程の適応力を見せるので、平和と言えば平和だし、単調と言えば単調だ。
この適応力は早々に発揮され、そしてなぜか納得してしまう。貴船という土地柄がそうさせるのか、人物達の思考に無理がない。
俺も当事者であるならば考えそうな理屈なのである。なので、結構物語をすんなり受け入れてしまえる。
リープしてる間の2分間はほぼ1カットの長回しなので、そうそう手の込んだ事も出来ないのだけど、パンチ力に欠けるというか、谷間みたいなモノがあれば尚、楽しかったかなぁと、ふと思う。
天候の変化を時間軸のズレとかで押し切ってしまうとこなんかは好きだ。
いきなり雪が積もってた時は不自然極まりないのだけれど、スルーされるよりは強引にでも理由が欲しかったりもする。
にしても…この企画力は賞賛に値すると思う。
貴船ってロケ地もそうだし、少ないであろう予算の範囲で、見事に成立してる。
惜しむらくは絵のチープさが目立った事だ。
1カットにおけるカメラワークの限界というか…始点を彼女に固定した事の弊害というか。
そんな事をちょっと思う。
深読みするなら、時間という概念に囚われすぎな現代を映してるとも思える。
色んな事起こるし、色んなストレスを感じるのだけれど、その永遠とも思える2分間を追う事で大概治るとこに治っていく。
時間が足りないだったり、時間に追われるだったり、そんな事から端を発してる事ってめちゃくちゃ多いんじゃないかなぁと。制限がある前提で動かざるを得ない社会の憐憫さも見え隠れしてたような。そんな深読みも出来るようなパーツがあるとこなんかは流石なのだ。
そういう牢獄から解放された場所を「貴船」にした事にも、なんらかの意図があったのだろう。
昔、京都に住んでて何回か行った事あるけど、アソコは時間が止まってるのかと錯覚してしまう。
東京とは明らかに時間の流れが違うと思えてしまうのだ。
この作品が出来上がったのはコロナによる影響もあったのかなぁなんてふと思う。
そうでもなけりゃ、いくら貴船と言えども、あんな大胆なロケは敢行できないのではなかろうか。
久保さん観たさに行ったのだけど、拾い物だった。
冒頭が久保さんから始まるのだけど…やたらにカットが変わる。観にくいレベルで変わる。
後の1カットへの伏線かもしれんが…正直あまり意味は見出せなかった。
で、まぁ、ご本人と言えば特に役作りの必要もなく、乃木坂工事中で見る彼女と何ら変わる事はなかった。