「是非観に行って確かめて欲しい」劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト) SATさんの映画レビュー(感想・評価)
是非観に行って確かめて欲しい
劇場版シティハンター最新作、ふたりの娘と2回観てきました。
賛否両論のある今作。
前作や原作との違いを受け入れられない方々は辛口レビューをしている傾向があるように感じます。
前作との違い、特に顕著なのは楽曲。
今回はTMN絡みではない楽曲は登場しません。
あれもこれも今度は聞きたかったと期待していたならば期待はずれとなるかもしれませんが、自分は言うほど古臭さも雰囲気を崩したと感じませんでしたし、むしろ、今のTMN3人が過去にあぐらをかくのではなく、真っ正面から今作に向けて新たな楽曲を作るという挑んで戦った結果、見事に映像と楽曲が融合していたと思いました。
歌以外のBGMも良かったですし、映像も前作と比べて落ちたとは感じずにどっぷりとシティハンターしていましたし、最新の技術でありがちなエフェクトを使いすぎて見づらいという事もなくアクションも素晴らしい。
製作陣に作品愛と過去に満足するのではなく新たな作品として取り組み、挑戦する気概を感じました。
原作との違いはまずはオリジナルキャラクター。ウェットワークスの3人
アンジー、ピラルクー、エスパーダ。
原作の人気キャラクターの役目を担ってしまったのではないかという心配から何なんだという気持ちを抱く人も多かったのかと思いますが、先入観なく観ていたら、充分3人ともキャラが立っており自分としては何で、3人と海原のグッズがないのが残念でなりません。
ピラルクーとエスパーダのカップそばのグッズ欲しかったな。
実際出したらそれなりに需要はあったと思いますがそこは自信を持って推せなかったのですかね。残念です。
3人とも魅力的で生きて次作にも出て欲しかった位でしたが。
そして特にここが許せないという人が多かった、ラストのメインキャラクターたちの判断について。
獠や香がタブーを破ってしまい、これは彼らではない受け入れられないという意見が多いですが、果たしてそうなのか、製作陣は簡単にその決断をしたのかどうか考えてみました。
少なくとも、極限状態の中、アンジーに対してどうすれば幸せなのか、獠も香も葛藤していましたし、そこは製作陣も葛藤していたのは一緒だったのかなと思います。
それを特に感じたのは、特典のブックレットで原作者があの決断について言及していたという事実からでした。
作品を観たファンの方々があの決断に対して、賛否両論あるだろうというのを見越しており、おそらくこの決断をするには簡単にしたのではなく、タブーを破ってしまうという重大な認識の上で製作陣の思いが籠められていたのではと推測できました。
もしも、香という守るべき人がいなければ、獠はアンジーの獠を越えたい、海原を振り向かせたいという想いに応えるために命を差し出していたかもしれない。
それをしなかったのは香の為に自分は死ねない。
それだけでなくアンジーを救うにはああするしかなかった。
誰が十字架を背負わないといけなかった。
自分も今までの獠、今までのGet Wildとは違うとは感じましたが受け入れたいとは思いました。
あのまま戦っていたらアンジーはエンジェルダストに支配されて、人としての尊厳を失い、身体も崩壊していた。
アンジーにはそれが分かっていたから獠に助けを求めた。
獠もエンジェルダストを打たれた、また別の人間が打たれた所もおそらく見た事はあっただろうから助からないのは分かったのでしょう。
もし海原がエンジェルダストを撃ち込まなければアンジーも元に戻れた可能性はあったでしょうが、戦いながら獠もアンジーがエンジェルダストにのまれない様に呼び掛けていましたよね。獠と同じ様に克服する道を模索していたのだと。
ただ、それは出来なかった。
また、エンジェルダストについて、勘違いをしていた投稿もありましたが、エスパーダが使っていたのはエンジェルダストのアダムではなく、効果が弱いものだとピラルクーが言い聞かせる場面がありましたが、これを聞き逃すとエスパーダがエンジェルダストアダムを多用していてエンジェルダストの恐ろしさが薄くなったとなりますが、そうではなくて多用していたのは別物です。
また海坊主が解説に回って助けに入らなかった事について。
これは海坊主が今まで獠が戦った中でも一番の強敵とアンジーを評しており、エンジェルダストを打たれた事により精神は崩壊し、殺人マシンといつ変貌するか分からない。
獠との戦いの時にエンジェルダストの恐ろしさは海坊主は体験済みで下手に手出しをすれば殺されかねない。
もし、そうなれば美樹は誰が守るのかとなり、獠に託すという選択肢を取った。
話しはアンジーに戻りますが、獠がここで倒れたらとしたら、アンジーは本当に救われるのか。
心も身体も崩壊して、その発端となった海原を誰が止めるのか、誰が決着をつけるのか。
こう考えると今回の獠は香だけでなく、海坊主、殺し合う必要のなかったウェットワークスの3人、それぞれの想い、十字架を背負ったのではないかと。
それは出来れば背負って欲しくない十字架だったかもしれないけれど、誰かが背負わなくてはいけない。
それを獠は分かっているからあの決断をしたのだと。
安楽死について是非が問われる事もありますが、今回のアンジーの件を分かりやすく例えるならば安楽死かと。
獠が十字架を背負った事で、海原の陰の部分が大きい事を決定づけた訳ですが、このタブーを破るという大きな決断が良かったのかどうなのかは次回作以降に持ち越されるかとも思っています。
少なくとも今回見終わった後に色々な感情、どうしたら良かったのかと考えさせるGet Wild。
いつもとは違うし重いのだけど、これはこれでありだな。
受け入れて、自作を待ちわびたいなと自分は思いました。
ちなみに今回、シティハンター初体験だった、ふたりの娘たちは気に入った様子で、もっこり獠ちゃんよりも見た目は厳ついけれど優しく照れ屋な海坊主が好きだと言って2回目も観た訳です。
もっこりがしつこい。ギャグが多すぎるというのもありますが、時代が変わって、新しい若者たちが観ても受け入れてもらえる作品にだったから娘たちにも受け入れられたのかと思いました。
その後、海坊主グッズを買うという想定外の出費はありましたが。
何はともあれ、シティハンター好き人でも観た事がない人でも、まずは劇場の大きなスクリーンでの迫力を堪能して、良かったかどうか確かめて観て下さい。
どうかレビューも良くないものもあるし、円盤が出るまで待てば良いやとなったら自分は損すると思います。
劇場で観て、こそ最大限に楽しめる作品になっていますから。
星が一つ少ないのは、アンジーと海原のエピソード、特に出会い以降、大人になってからの関係性が分かるものがない。
もしかしたら、年齢的には幼少期に獠にも会っているかも知れないと妄想しています。
これが星半分。
もう半分はカーチェイスであまりに相手の場所が分かり過ぎなのが現実味がないなと感じた所です。
いつかウェットワークスと海原のスピンオフ作品なんて観てみたいな思っています。
最後に、この作品は台詞や表情を見落とすと、よく分からない、誤解してしまう危険性はあるかもしれません。
一回観て、うーん違うなと思っても、また観たら、あれそうだったのと印象は変わるかもしれません。
声優さんも、メインキャラクターはオリジナル声優さんたちが奮闘しています。
アンジー初め、オリジナルキャラクターの声優さんも難しい役どころを見事に演じています。
声優の方々のひとつひとつの台詞と演技を噛み締めるのも一つの楽しみ方でしょう。
受け取り方は人それぞれですが、少なくとも製作陣の熱い思いと愛情、手抜きをしないでやり抜く気持ちが伝わってくる素敵な作品になったと自分は感じています。
是非劇場で確かめて観てください。
そして、次回作を楽しみに待ちましょうではありませんか。