WANDA ワンダのレビュー・感想・評価
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ようやく陽の目を浴びて
内容が軽度の知的障害、もしくは発達障害がある弱者の生きづらさを半世紀ほども前に映像化した作品。当時、この作品がさほど理解されなかったのは時代と社会が未だ追いついていなかったのが現在から見れば良く分かる。今も昔も未来も生きづらい人は存在する。そういう人たちを社会はどういう風に受け入れるのか、またケアするのか、この映像による問題提起は私たちの本気で取組むべき社会問題である。日本は凄まじい老人社会が現出するのはもはや確定しているだけに、この問題は私事として誰もが捉えるべき最優先の課題でもある。莫大な資産を持っていない限りは、明日の自分の世界がこの作品に投影されているのだ。
それなりに生きてゆく、しかない
ロマンスを排除した『俺たちに明日はない』を例えにしながらもワンダには明日が訪れる、劇的に絶望を煽るモノではなく、希望に満ちてもいないし、人生において何かを求める強い意志もない、マンネリ化したその日暮らしに比べたら刺激はありそうだが虚しさが募るだけ。
1960年代後半から70年代前半に女性が高らかに声を上げた解放運動であるウーマン・リブとは愛想れない女性像、ワンダに対して怒る女性や呆れる男性が相当数いるだろう、でも誰もが物事を達成する為に打開する動きを起こすのではなく、行動を起こせない、何も分からないまま生きている人間を責められない、今の時代にも日本にもワンダのような女性や軽薄な男性が存在する、何も変わりようのない実情がある筈。
ザラついた景色と町並みには美しさの欠片もなく無軌道で衝動的な若さもない『地獄の逃避行』であり、友情ですら生まれない『テルマ&ルイーズ』と『ワイルド・アット・ハート』や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に『トゥルー・ロマンス』のような刺激的な娯楽性もなく『リバー・オブ・グラス』みたいに和める要素ですら持ち合わせない無機質な感覚。
テレンス・マリック、リドリー・スコット、デヴィッド・リンチ、オリバー・ストーン、トニー・スコット、タランティーノ、ケリー・ライカート、アメリカン・ニューシネマの時代、逃亡物ロードムービー、語弊がありながらも先陣を切ったのは本作の監督であるバーバラ・ローデンであり彼女が演じたワンダである女性が弱々しくも強く存在している。
目が覚めるほどダメな女
だらしない女だなぁと思ったら頭弱い子なのかしらん?
頭も股も少しゆるくてスキだらけ、なんだかんだで従順な女。見た目も可愛らしので男性がほっとかない。気がつくとハマってる男がチラホラ…優良物件には当たらないが男には不自由しなさそう。
ほぼ全員が発達障害かのような、ジャンヌ・ディエルマンの様な、ラポワ...
ほぼ全員が発達障害かのような、ジャンヌ・ディエルマンの様な、ラポワント・クールトの様な、ウェンディ&ルーシーの様な作品。ある女性たちがある一時期にある一様の作品を作るのは、才能と時代なのかしら。
去年のライカート特集で
ケリー・ライカート特集で見たリバーオブグラスがとても良かったので、
ワンダの影響も受けていると聞いて、ずっと見たいと思っていた。
何も出来ず夢も希望もなく、ただなんとなく大人になり地元の人と結婚し出産して、子育てもやる気がせず、離婚もすんなり受け入れ親権も譲る。
そんな彼女が強盗の手伝いを褒められた時に見せた笑顔が可愛らしく悲しかった。
こういう埋もれた名作を修復したり配給してくださる方々に感謝します。
男性社会へのアンチテーゼ
夫に離婚され、子供の親権もあっさり放棄、仕事もなく、家にも居場所がない。そんな無いない尽くしの女ワンダが彷徨った末に会った男は強盗だった。男の逃避行に付き添うワンダだが…
まるで『俺たちに明日はない』を思わせるロードムービーだが、主演にして監督兼脚本のバーバラ・ローデンは、『俺たちに~』へのアンチテーゼとして作ったと語る。それは今でも続く男性社会へのアンチテーゼ。だからこそ、『エル ELLE』で男に抗う女性を演じたイザベル・ユペールが本作を気に入り、配給権を買い取ったのも理解できる。
とにかく劇伴もなければセリフも極端に少なく、画質も粗い。ロングショットも間延びした本作を、今の若者が観たら退屈に感じるかもしれない。最後まで観て、結局ワンダは何がしたかったのかと不満に思う人もいるだろう。でも本作が作られた1970年代のアメリカ映画=アメリカン・ニューシネマはどれもこんな感じだった。
バーバラ・ローデンという女優は全く知らなかったが、ミシェル・ファイファーやキャメロン・ディアスを彷彿とさせる彼女の、終始憂いを含んだ薄幸の表情が印象深い。バーバラ本人はワンダのような自堕落な人間ではなかったのだろうけど、彼女の中にはワンダが存在していたのだろう。
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