劇場公開日 2022年7月9日

「バーバラ・ローデン監督&主演の佳作」WANDA ワンダ たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5バーバラ・ローデン監督&主演の佳作

2022年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

下高井戸シネマにて鑑賞。

1970年作品であり、「死ぬまでに観たい映画1001本」にも選ばれている作品なのだが、今年(2022年)ようやく日本初公開されたバーバラ・ローデン監督作品🎥
ようやく観た!

序盤は「何か起こるのか?」と思わせるほど、淡々とした描き方の映画で、どこかに泊まらせてもらった女性が延々と炭鉱現場を歩いていくが、これをロングショット長回しで撮っているものだから「あの女性がどこかに行くのか?」と思う。
その後も、ビールをご馳走してくれたオヤジとベッドを共にするが、さっさと逃げるオヤジ。
しかし、その女性ワンダ(バーバラ・ローデン)に悲壮感などは無い。

更に、家庭を捨てて夫と離婚して子供を失い、仕事も貰えず、映画館で映画を観るワンダ。
このシーンが、[【映画館で映画を観るシーン】を映画館のスクリーンで観ている私たち]という実に不思議な空間に感じるアングルで撮られていて、見事な映像体験だと感じた。

そんなワンダは、映画館で眠ってしまった時に、有り金を盗まれてしまう。
そして、バーで出会った男(マイケル・ヒギンズ)と犯罪の共犯者に巻き込まれるワンダだが、最初は抵抗するものの、すんなりと犯罪に加担するようになるのだが……といったクライム映画となっていく。

この作品を撮ったバーバラ・ローデン監督は、エリア・カザン監督の妻だったが、本作1本を撮ったあと、ガンのため死去されたとのことで、彼女が遺した唯一の映画となってしまったのは惜しい。

今回の上映では、冒頭に「本作は2010年にリストア&修復した映画であるが、本作が生み出された当時の低予算映画の雰囲気を残すようにリストアしたもの」とのことで、本当に「これって本当にリストア版?」と思わせる画質の粗さを見せる。
ただ、これが本作の良さであろう……というのは、観終わった時に思うこと。

また、本作は2022年日本初公開の外国映画なので、キネマ旬報ベストテン応募用の[投票可能作品]となっており、こうした映画が製作から52年の時を経て[キネ旬ベストテン選出]されたら奇跡的であろう。

アメリカンニューシネマ(『俺たちに明日はない』など)に近い内容ではあるものの、それらとは一線を画したインデペンド系映画の佳作。

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たいちぃ