劇場公開日 2022年7月9日

「まさに忘れ去られていた伝説の「天才」発見!」WANDA ワンダ osmtさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0まさに忘れ去られていた伝説の「天才」発見!

2022年9月4日
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鑑賞方法:映画館

こ、こ、これは… もの凄い才能…
まるで殆どドキュメンタリー。
実際、50年代に本当にあった銀行強盗の話をベースにしているのだが…
なんでこんなリアルに撮れるのか…
ローデンは勿論のこと、出てくる役者みんな、なんであんなにリアルで上手いのか…
エリア・カザンも協力していたので、ほぼ全員無名のアクターズ・スタジオ出身者かと思っていたが、Mr.デニスを演じたマイケル・ヒギンズ以外は皆地元の素人だったようで…
裁判所での夫の振る舞いなんか完璧なメソッド演技にしか見えない…
たぶん演技指導の方もカザンの助けがあったのかもしれないが…
(ゴッドファーザーに出てたリー・ストラスバーグなんかより、ずっと上手いぞ!)
脇役も皆んな完璧(エキストラも含めて)
もう本当に奇跡のようだ。
これだけの作品、そりゃ当時、ベネツィアで賞も獲るよ。

脚本も素晴らしいが、とにかくフレーミングも天才的。
なので、画面だけで、ずっと惹きつけられる。
ラストの粗い絵画のような暗く孤独なフリーズショットも本当に残酷なまでに美しい。
今まで観た16mmの中では最も印象的なラストショットだった。

ちなみにローデンご本人、曰く「綺麗な映画が大嫌い」だったらしい。
綺麗に洗練されれば、される程(音楽や編集も全て)綺麗なだけの内容となり、登場人物までもが上辺だけになってしまう…とのこと。
実際この映画は、類型化された洗練さとは全く無縁なのだが、あまりに誠実で、独自の表現としては見事なまでに洗練されている。
まさにアートそのもの。

90年代のケリー・ライカート『リバー・オブ・グラス』は、間違いなく本作へのオマージュに違いない。

osmt