劇場公開日 2022年7月9日

「それなりに生きてゆく、しかない」WANDA ワンダ 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5それなりに生きてゆく、しかない

2022年7月12日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

難しい

ロマンスを排除した『俺たちに明日はない』を例えにしながらもワンダには明日が訪れる、劇的に絶望を煽るモノではなく、希望に満ちてもいないし、人生において何かを求める強い意志もない、マンネリ化したその日暮らしに比べたら刺激はありそうだが虚しさが募るだけ。

1960年代後半から70年代前半に女性が高らかに声を上げた解放運動であるウーマン・リブとは愛想れない女性像、ワンダに対して怒る女性や呆れる男性が相当数いるだろう、でも誰もが物事を達成する為に打開する動きを起こすのではなく、行動を起こせない、何も分からないまま生きている人間を責められない、今の時代にも日本にもワンダのような女性や軽薄な男性が存在する、何も変わりようのない実情がある筈。

ザラついた景色と町並みには美しさの欠片もなく無軌道で衝動的な若さもない『地獄の逃避行』であり、友情ですら生まれない『テルマ&ルイーズ』と『ワイルド・アット・ハート』や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に『トゥルー・ロマンス』のような刺激的な娯楽性もなく『リバー・オブ・グラス』みたいに和める要素ですら持ち合わせない無機質な感覚。

テレンス・マリック、リドリー・スコット、デヴィッド・リンチ、オリバー・ストーン、トニー・スコット、タランティーノ、ケリー・ライカート、アメリカン・ニューシネマの時代、逃亡物ロードムービー、語弊がありながらも先陣を切ったのは本作の監督であるバーバラ・ローデンであり彼女が演じたワンダである女性が弱々しくも強く存在している。

万年 東一