「韓国と北朝鮮の人々が織りなす緊迫した人間ドラマと、凄まじいスペクタクルが見事に融合した一作」モガディシュ 脱出までの14日間 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国と北朝鮮の人々が織りなす緊迫した人間ドラマと、凄まじいスペクタクルが見事に融合した一作
国家間関係としては依然として緊張関係にある韓国と北朝鮮ですが、両国の国民が理解し合える機会は果たして訪れるのか、というテーマは、これまでも多くの作品で描かれてきました。大ヒットしたドラマ『愛の不時着』はその代表作の一つですが、近年では『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)などの傑作も制作されています。本作もまた、韓国と北朝鮮の問題を扱った映画としては今後間違いなく作品名が上がるであろう傑作となっています。
互いに弱さと猜疑心を抱えた両国の大使館職員(とその家族)が、対立感情を乗り越えて難局に打ち克とうと奮闘する描写は、しばしば予想通りの部分を含んでもいましたが、彼らを取り巻く状況の緊迫感が余りにも高いため、むしろこうしたお約束展開が一服の清涼剤になっています。緊迫感の緩急の付け方が絶妙で、リュ・スンワン監督の演出力が冴え渡っています。
後半には果たしてどうやって撮影したのかと仰天するような映像も含んでいて、本作が堅い政治ドラマではないかと懸念している人でも、決して退屈させない、娯楽作品としても超一級の仕上がりとなっています。裏返せば重厚な人間関係を期待して、動きのあるアクションが苦手な人にとってはちょっと意外な内容かも知れません。
主人公達が巻き込まれたソマリア内戦の混乱状況は、『ブラックホーク・ダウン』(2001)でも描かれていましたが、そこではソマリアの人々(民兵を含む)がゾンビのような扱いを受けていました。一方本作では、何人かの登場人物に絞られてはいるものの、ちゃんと生活背景のある人々として描いているところも良かったです。韓国・北朝鮮問題やソマリア内戦について知識がなくても楽しめる作品となっていますが、それらについて少し事情を予習しておくと、さらに本作を楽しめること間違いなしです。