「カオスの中の主軸」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス fujitaka1217さんの映画レビュー(感想・評価)
カオスの中の主軸
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マルチバースやバースジャンプなどの演出でカオスな世界観を演出しているが、
主軸としてあるのは母と娘、父と娘の溝と関係の回復だ。
あくまで主人公の葛藤や混乱の表現としてとらえるなら、ストーリーは非常にシンプルで分かりやすく、伝えたいメッセージも明確だ。
観終わってみてしっかりと残る、長編小説を読み終わった読後感のような印象は良作であることの証なのだと思う。
手法としてはマトリックスに近く、バカバカしさはスイスアーミーマンを一部超えている。
スイスアーミーマンの時もそうだったが、ダニエルズはどこまでも人の知られたくない
内面の映像化に特化していると感じた。弱さや葛藤、社会に対する不満などの想いを
言葉でなく映像で、しかも誰も考えないような設定で具現化することで、
痛烈な風刺のように観客の心に主題を突き付けてくる。
鬱屈し疲弊した社会の中、変わらない現実で逃避行を求めるのではなく、
しっかりと現実と向き合い、対話することで一つ一つ紐解いて、皆で向き合っていく。
選択されなかった未来は、一つの可能性であるが、今に勝る可能性は無いと
明るい可能性に向かって歩みだす姿が、現代の日本人にも刺さる要素だと感じた。
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