「リテラシーと遊び心を試し人を選ぶ傑作」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ビート板教室5年目さんの映画レビュー(感想・評価)
リテラシーと遊び心を試し人を選ぶ傑作
低評価が多く理解ができないというレビューが目立ちます。
その気持ちもよくわかりつつ、大いに楽しめた自分視点から、少々解説を
まずこの映画に大前提として必要なリテラシーが、量子物理学からの多元宇宙論です。
ざっくりですが、全ての物質の根元でもある量子には、とても不思議な性質があり、観測するまで波の性質か粒の性質かわからず二つの可能性が同時に存在している。とされています。
自分にも正直意味不明なのですが…
この理論に対し物理学では今なお研究が進められています。
仮に同時に2つの可能性が存在していることを物理学が認めてしまうと、それなら宇宙は無限に可能性が枝分かれし続け並行して無数に存在してしまうことになる。という仮説が展開します。
これがマルチバース説です。
近年この不思議理論は創作に多用され、アメコミでも馴染みのマルチバースものというジャンルにまでなりつつあります。
そんなややこしいマルチバースの設定を次から次へとハイスピードでガンガン繰り出しては人を選ぶバカコメディに仕立てあげてしまったのでもう大変。
多元宇宙に飛び出せない観客はバースジャンプが出来ず文字通り置いてけぼりになります。
正直自分も、ひとつひとつを説明しろと言われると困ってしまうのですが…
筋としては、あまりにも途方もなく何でもありな宇宙で、ちっぽけでこんなにも辛い自分の人生には、最早なんの意味があるのかさっぱりわからない。全ては無価値である。
という虚無主義的思考に対し、それでも生きるに値する瞬間はあるよねと語りかけるのがこの映画の根本ではないかと思います。
この映画の評価のポイントはよくぞこんな変な映画を作ったねという点と長年の不遇に負けなかったアジア系俳優陣に対するハリウッドからの賞賛なのかと。
わからない、不思議なものを知りたいと思う好奇心とバカなことを愛でる子供のような態度で観ると、結構楽しめるかもしれません。