「感性で観るべき家族愛が底流にある異色作」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
感性で観るべき家族愛が底流にある異色作
今年のアカデミー賞作品賞有力作品。理屈で観てはいけない。感性で観る作品である。理詰めで観ると、マルチバース乱発でストーリーが雑然として分かり難い作品になってしまう。しかし、詳細に拘らず、感覚的に観ると、作品を貫いている普遍的なテーマがあることが分かる。作り手が、敢えてストーリーを理路整然とせず、感性で観ることを誘導しているように感じた。
本作の主人公は、破産寸前のコインランドリーの経営者エヴリン(ミシェル・ヨ-)。彼女は、頼りない夫、反抗期の娘、ボケて頑固な父親に囲まれて、満身創痍の日々を過ごしていた。そんな彼女の前に、ある日、別の宇宙から来たという夫が現れる。彼に言われるままに、主人公は、マルチバースの世界に飛び込んで、カンフー達人能力を授かり、人類の存亡を賭け宇宙の巨悪との戦いに挑んでいく・・・。
マルチバースの切り換えはマトリクスを彷彿とさせるスリルがあるが、頻繁で唐突である。ストーリーを追うのは大変だが、切り換え先には、違う人生の選択をしたエヴリンがいる。マルチバースというよりは、人生においてあの時の別の選択を実際に具現化した感が強く、自分のあの時の選択について考えさせられる。
アクションシーンはカンフー満載でスピード感がある。下品なシーンもあるが、演者達の大真面目な演技が笑いを誘う。
主人公役のミシェル・ヨ―は、マルチバース切り換えの度に色々な役柄に成りきっている。カンフーアクションも見事に熟している。役柄に合った表情の作り方が巧い。正しく七変化の変身ぶり。
全編を通して感じたのは、家族愛である。ラスト。戦いが終わり、現世界に戻ってきたエヴリンの穏やかな表情が象徴的だった。雨降って地固まるという諺の通り、エヴリンの壮絶な経験が、エヴリンと家族の絆を深めたと感じた。本作は、マルチバースの世界でのアクションが目立つが、家族愛が底流にある。家族愛をテーマにした異色の愛の物語である。
みかずきさん。コメントありがとうございます。
キネマ旬報懐かしいですね。採用されたは喜びはわかります。私もNHKが出版した「百万人が選んだ映画・・」の単行本の中の映画1つに採用され載りました。
中学1年より洋画観ることが多いため、「スクリーン」後に「ロードショー」の2冊購入で読んでました。同時に映画音響(当時は立体音響)とオーディオ、使われた音楽(クラシック〜ロック、ポピュラー〜JAZZ)と広げてきました。
この映画、おっしゃるとおり、感性で観ることが正解思います。
ありがとうございました。
作品を貫くテーマは、確かに気が付けば伝わってきていました。感覚的で飛び飛びな描写が続くにも関わらず、です。
みかずきさんのレビューを読ませていただいて、腑に落ちました。
こちらこそフォロー誠にありがとうございます。文章を拝読し、当方新参者ですが目標は早く達せられるのではないかと感じます。
みかずきさん、コメントありがとうございます。
アカデミー会員も非白人が増え、多様化も進む中、どんどん変化していきそうですね。まぁ、有色人種が増え、やがては世界に誇るアカデミー賞になるのですから、ますます注目度も高くなりますよね。
今日の授賞式は本当に良かった♪
前哨戦で組合賞を受賞した時点で、本作の受賞はまず固いと思ってました。例年、組合賞を制した作品がアカデミー賞も受賞してますから。
また自分で直に見て、斬新さや深いテーマも良かったですからね。
個人的にはミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンの受賞は感慨深かったです。
コメントありがとうございます
今作品に対しての酷評は、「なんでこんなおもちゃ箱ひっくり返したような作品がアカデミー賞なんだ」という自己評価との乖離と、『♪言いたいことも言えないこんな世の中じゃ♪』のポイズン的、ネガティヴ発想からの一種のヘイト発言に起因しているのではと勝手に感じました 気持は分らないでもないのですがね(苦笑 「こんな面白くもない愚作を祭り上げられているのはディープステート云々」的陰謀論に直結するのでしょう
私は映画は『総合芸術』だと思っておりますので、単なる"物語"では無いと思います 表現方法は千差万別であり、どれ一つとして優劣はないと存じます あるとすれば"好み"なのでしょうけど、それこそそれは感性の違いですものね なので、レビューには「自分には合わなかった」と書くのが正解で、表現内容に罵詈雑言を並べる場所では無いと僭越ながら考えます
すみません、長々と勝手な主義主張を書き汚してしまいました
感性として引っかかった部分を拡げて、響かなかった部分は自分を問い詰める
それが"リスペクト"なのだろうなぁと・・・ ほんと失礼しました