「中年女性、移民、アジア人、そして母親」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
中年女性、移民、アジア人、そして母親
中年女性、移民、アジア人、そして母親である主人公の物語がアカデミー作品賞にノミネートされる時代。
長らく白人男性に独占されてきたオスカーだが、ノミネートされただけでも快挙だと思う。
しかも上流階級が上から目線でポリコレを押し付けるような説教臭い作品ではなく、どちらかといえばマニア向けのエンタメ作品として、だ。
レビューが賛否二分しているように、決して万人受けする作品ではない。万人受けする作品が観たいなら「フェイブルマンズ」を見ればいい。
全体的に下品で馬鹿馬鹿しいノリだが、日本のバラエティにありがちな人の容姿や体型を馬鹿にするような笑いはない。
というか馬鹿馬鹿しいことを全力でやっているが、登場人物たちはふざけているわけではなくいたって真剣なのだ。これはボーボボもマサルさんも同じだが。
そして役者たちのスキルと演技力が凄まじいせいで、馬鹿馬鹿しい設定なのに後半見事に泣かされてしまう。おかしい、こんなに泣く予定ではなかった。
家族のためと言いながら日々に忙殺されて家族に対し思いやりの欠ける行動をとってしまう主人公にも家族の側にも共感できる人は多いだろう。
母から見ればただの反抗期に見える娘も、何度母の無神経さに失望させられてきたか。
一見頼りなく見える夫もどれだけ妻を支えてきたのだろう。
これは壮大な宇宙の話でもありながら、ミニマムな家族の話でもある。
人生は確定申告のように面倒で思い通りにいかない日常の積み重ねだ。それでも一緒にいたいと思える相手に出会えるかはすべて日々の選択の結果だ。
アカデミー助演男優賞にもノミネートされているキー・ホイ・クァンは、長らく裏方の仕事に回っていたが、コロナ禍で仕事も激減し、保険証が切れるほど追い詰められていたらしいが、この作品で見事20年ぶりに俳優へのカムバックを果たした。
権利の関係もあるのかもしれないが、配給会社にはぜひともウエストポーチや目玉シールなどのグッズを売ってほしかった。あと確定申告に欠かせない領収証など。
追記:アカデミー7部門受賞おめでとう!特に主演女優賞のミシェル・ヨーと助演男優賞のキー・ホイ・クァンのスピーチが感動的だった。アジア系俳優が中国資本でもない作品で受賞できたのはとても喜ばしい。