「鉄格子の内も外も、「この世」という同じ監獄」内なる檻 らんさんの映画レビュー(感想・評価)
鉄格子の内も外も、「この世」という同じ監獄
クリックして本文を読む
宗教的寓意に満ちた、深みのある素晴らしい作品だった。
閉鎖直前の刑務所で、食事をどうするかという問題を軸に、囚人と刑務官の関係性を描き、そこから「内なる檻」の監獄としてのこの世を見出している。
「監獄は辛いよな」
「こちらは外だ」
「そうか。知らなかった」
という、囚人ラジョーイアと刑務官ガルジューロの、鉄格子を挟んだやりとり。
或いは、
「お前たち(囚人)に誰と食事をするかを決める権利はない」
というガルジューロの言葉などは、刑務所を通して、神からもたらされた運命の下に生きる人間という存在全体に向けられている。
クライマックスは、停電した嵐の夜に僅かな明かりの中全員で囲む食事の場面となる。
勿論最後の晩餐のスタイルで、何故か刑務所にあるワインや天使のストーリーなど、美しい画面だった。
電源が復旧して再び明かりがつき、囚人が各自の房へ戻った後に名前で点呼される頃には、鑑賞者である自分も、それぞれを個性ある一人の人間として認識するようになっていた。
老人を殴って瀕死に追い込む、という凶悪犯罪を犯して収監されたファンタッチーニが、刑務所では献身的に高齢の囚人の世話をしている場面も印象的だった。
優しい人ほどこの世で生きづらく、行き場をなくして犯罪に走ってしまう、という問題は、万国共通なのか。
願わくば、ファンタッチーニにスポットライトを当てた続編を希望したい。
それにしても素晴らしかった。
コメントする