劇場公開日 2023年3月24日

「絆や家族愛や親の恩と罪悪感という呪縛」ロストケア みいさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0絆や家族愛や親の恩と罪悪感という呪縛

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

実両親義両親を見送り、自分の終活も考えなくてはならない年齢にさしかかってきた。
だから、このテーマは身につまされる。綺麗事では解決できない。
4人の親の死を見届けてまず感じたのは開放感だった。「やっと、終わった。」
自分のまわりの同世代のひとたちも、純粋に親の長生きを願っているばかりではない。
あるひとは言った。「私は母より長生きしなくちゃならない。それは、母への愛や責任感ではなく、母が死んで開放されて、自分のために生きたいから。」

映画館で、ずっと斯波の視点に肩入れしつつ観ている自分がいた。
松山ケンイチの眼の演技が秀逸。介護士としてお年寄りと接するときの慈愛に満ちたまなざし、司法と対決するときの何もかも諦めたようなぞっとするほど虚ろな瞳、最後に大友の告白を聴いているときの感情を取り戻したようなまっすぐな視線。

家族の絆という呪縛に囚われ続けなくていいよ、そう声を大にして言いたいが、じゃあ家族が放り出したら、この国の高齢者(特に貧困層の)はどうなる?
本当に気が重くなる、切実な映画だった。

みい