劇場公開日 2023年3月24日

「ナメてました」ロストケア TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ナメてました

2023年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

正直この作品、劇場で観ようか観まいか迷っていました。
「この(前田)監督の作品の傾向は・・・」とか「この手の題材は・・・」とかいろいろ理由をつけてみたものの、結局は逃げられない気がしたのです。で、鑑賞した感想ですが、ちょっと驚きましたね、ナメてました。
私、原作は未読です。ただ、本であればこの「攻めた感じ」もよくありますが、これを映画で、しかも松山ケンイチ&長澤まさみという主演でやるプロデューサー有重陽一氏、あっぱれです。
そして実際、その意気込みに前田監督、そして脚本の龍居由佳里さんが見事に応えています。この手の内容にありがちな「欺瞞すら感じてしまう設定」や「過剰でノイズにすらなり兼ねない演出」は一切ありません。
ちなみに私自身はこの作品、泣けるなどの感情は全くありませんでした。しかしながら、これだけ納得がいって、自分の体験や思いを投影しながら観ると、まるで「代弁」とすら感じてしまう内容で思わず唸ります。とは言え、この作品に対して「全く以て同意できない」という意見も理解できます。いずれにしても大事なことは、(観たくないものからも)目を逸らさないこと。そして倫理という概念で単純に「タブー」としてしまうことによって、残酷な立場を強いられる人もいる不条理さを知り、まずは議題に挙げなければいけないことだと感じます。
そしてまた、各登場人物それぞれのキャスティングと、その役を演じる役者の皆さん素晴らしいです。特に私の印象に残った4名。
まずは何と言っても松山ケンイチさん。相変わらず、演じる役に合わせて感じさせる「温度感」が素晴らしい。今作の斯波役では、彼の流す「涙の温かさ」すら感じてきそうで、対する大友検事(長澤まさみ)を追い詰め、そして・・・すみません、これ以上は言えません。あとは作品を観て皆さんが感じてください。
そして、斯波の父・正作役の柄本明さん。この方のモンスターぶりも言わずもがなですが、今作はまた輪をかけて凄みがあり、この作品に違和感を感じさせない彼の演技こそが何より、私を作品に惹き込ませた要因と思わせてくれます。
さらには、坂井真紀さん。これくらいの年齢層の女性俳優の配役には割と「トレンド」みたいなものを感じますが、最近は特に坂井さんな気がします。まぁ上手ですよね。安心感がある。素晴らしい。そして、その対としての役・春山を演じる(ずんの)やすさん。もう、ナイスキャスティングですね。ハマりすぎてて演技力以上のものを感じ、思わず羽村(坂井)さんに幸せを願ってやまざるを得ません。
最後に一つ、いろんな意味で斯波に影響されまくる若者・由紀(加藤菜津)は意外に興味深い存在でしたね。彼女も違った意味で救いが必要な一人です。でも正直、私には救い難い存在ですね、、いやはや。。

TWDera