「つぎはぎの船で漕ぎだしてゆく。」ミューズは溺れない はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
つぎはぎの船で漕ぎだしてゆく。
描いては破く。造っては壊す。田舎町の高校の美術部。1枚の絵をきっかけに徐々に溢れだしてゆく感情。そして感性。少女から大人へ。そのための準備期間を丁寧に描いた青春群像劇。私はめちゃめちゃ好きです。
誰かを好きでいること。もしくは一度も人を好きになったことがないこと。親友だと思っていたのに何故かすれ違ってばかりで上手くいかないこと。家族なのに突き放してしまうこと。それぞれが抱える小さな絶望や、孤独感。まさに青い春。そしてそこに寄り添う色鮮やかな人物画とつぎはぎだらけの船。分解された仕掛け時計となかなか飛び立てない鳩。
なぜ私をモデルに選んだのか?その答えの先にあるもの。誰かの葛藤を知って初めて気付くこと。悩んで、乗り越えて、いつの日にか漕ぎだしてゆく。胸があったかくなる素敵なエンディング。それぞれのキャラクターも良かったし、タイトルも秀逸。観てよかったです。
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