「犯人にはフォーカスせず」警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
犯人にはフォーカスせず
事件発生から犯人逮捕までの過程を、警察の捜査とルーシーさんの両親との軋轢などを交えて描くドキュメンタリー。犯人側の掘り下げはない。東京の夜の街のダークサイドをある程度は示すがそこもあまり深堀するわけではなく、警察の捜査過程を当事者たちの証言をもとに追いかけていく内容だ。当時はまだ監視カメラが町中になかった時代なので、操作は難航していくが、ルーシーさんの両親が来日して自ら懸賞金を発表したりとメディアに積極的に登場し、イギリス首相とも面会し、政治的な働きかけもある中での現場の捜査員たちの強烈なプレッシャーを事細かに明らかにしている。
犯人は大量の余罪があり、前代未聞の性犯罪事件が明るみになったのだが、この作品を観てやはり多くの人は犯人は何者なのかが気になるのではないだろうか。複雑な出自を持つ人物で触れにくい面はあるだろう、しかし、この犯人がこのような犯行にいたる動機や理由は、この事件の重要なポイントではないかと思う。
当時の捜査員たちが今でも被害者の遺体が発見された場所にお参りに行っているのはとても印象に残った。
コメントする