「これは子供達へのメッセージ」劇場版 Gのレコンギスタ V 死線を越えて Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
これは子供達へのメッセージ
「子供たちへ送る未来へのメッセージ」
この劇場版の1作目のポスターの
コピーですがこれを最初見たときは
「んなこと言っても見に行くのは
自分みたいなガンオタのおっさん
ばっかりだろ」と思ってました
ですがこの5作目まで見終わった今
この意味が分かった気がします
齢80歳になる冨野さんにとっての
子供たちとはより幅広いものだと
ザンクトポルトまで見て帰ってきた
メガファウナ一行のベルリとアイーダは
世界の仕組みの全てを知り
宇宙の人類と地球の人類の思惑を
食い止めるために奔走する中で
Gセルフに託された強大な力の意味
親代わりの存在の本性まで
直面することになっていきます
戦いへの欲求が抑えられない
アメリアやキャピタル・アーミィ
憧れつつも地球人を恐れ身構える
トワサンガやジット団の面々
宇宙勢力の実力を図り
野心に利用するマスク達
仕込むだけ仕込んで
誰が生き残るかを高見しようとする
クンバ大佐ことピアニ・カルータ
戦闘的には大混戦になります
このへんがTV版ではわかりにくいと
酷評された点だったと思います
そもそもガンダムの世界で最も
大規模だった戦闘は初代のみで
大局に翻弄される感じが
色濃かったですが
それ以降は紛争レベルの規模
裏切りや造反による現場の混乱
などはよくあった事で
主役たちの意思が前面に出た
主体的なラストは名物ですら
ありましたから
よくよく考えるとそんなに
特異なものでもありません
逆に初代のほうが
ガンダムシリーズ全体では
特異なとこがあります
今作のメッセージは
宗教などで覆い隠されてきた
世界の秘密を自分の目で覗こうと
する勇気の大切さを伝えたかった
のかなと感じるところです
振り返ると今作の世界観は
宇宙から来る人類とテクノロジー
という点では「∀ガンダム」が
下敷きなのかなと感じます
そして∀では地球の人類を
あまりに旧世代に描いたことで
そんな時代のソシエらが
カプールらを難なく操れて
しまった点でいやがおうに
起こった違和感を
「近代的なとこまで進化した文明
なものの宗教的な背景が浸透し
タブーとして存在する世界」
として解消し
すごく今の時代に近い感じに
なっていると思います
近代の世界は経済的な交流
ネットの普及などで国民同士が
互いを知るうちにデメリット
が比較的理解されるように
なり戦争に否定的な意見が主流に
なりましたがそれは過去の
凄惨な世界大戦の経験が
そうさせるものでした
そして近代においても
戦争を是とする国家においては
情報を統制しコントロール
する事でイデオロギーを
意図的に作り出す
プロパガンダを依然
行っています
本当はそうではないと
わかりつつもです
Gレコの登場人物らは
あたかもネット社会の若者
のように理解が早く
だいたい互いの考えを理解
しつつ動いています
マスクはマニィが間に入って
パララがムキになったまま
戦っている事もわかっているし
マニィがマスクを立てようと
ベルリに戦いを挑んでくる
ところもベルリは理解してる
恐らくマスクはベルリが全然
悪い奴じゃないこともわかって
いますがクンタラの誇りのために
名を挙げることを思い立って
頑張ってきた自分を抑えられない
葛藤などまたひとつ人が戦いを
抑えられない部分が
よく表れていました
ベルリはベルリでGセルフの
あまりに強大すぎる力をなるべく
使わないように戦乱を治める
というこれまでのガンダムの
主人公からはまず考えられない
難解なことをやろうとします
アイーダはグシオンの死も
相まって葛藤しつつも
メガファウナの指揮を執る
など才能を発揮していきます
(がちょっとポンコツな
かわいらしいアイデンティティが
なくなっちゃってる気もしますが)
恋敵と思ったアイーダが姉弟だった
と知ってからのノレドには今回で
素敵な結末が追加されています
前述のとおり子供たちへの
メッセージになるのか?という
疑問に関しては確かにどの回も
自分を含めガンオタのおっさん
ばっかりでした
でもじゃあ初代ガンダムは
そもそも子供向けのアニメの
体裁をとりつつ結果的に
大人たちをも夢中にする
骨太な作品だったじゃないか
とハッと気が付きました
作品として残り続ける限り
年代を変えて見るたびに新たな
発見があればそれでいいのだと
思います
冨野由悠季監督の新しい事に
アンテナを張って今の時代に
合ったものを作ろうとする意欲は
頭が下がるばかりです
TV版の消化不良感をこうして
解消できてよかったと思います
個人同士がプライドやサクセスを
かけてやる戦いはどんどんやれ
それをつかめ
だが国家同士が持ちうる最大の
リソースでそれをやれば
悲劇と憎しみしか生まないぞ
というのが富野さんの平和への
願いなのかなと思いました