「よくできたジュブナイルSF」ぼくらのよあけ LSさんの映画レビュー(感想・評価)
よくできたジュブナイルSF
原作未読。キービジュから子供向けかと思ったが、SFとしてしっかり組み立てられていたと思う。
異星文明との接触ものだが、(主人公の少年少女たちに故郷のイメージは共有されるが)相手の実体は最後まで姿を顕さない。
実体の代わりに、媒体として水が使われるのが面白い。水を制御してコミュニケーションや演算のツール、果ては帰還用ロケットまで造るのだが、地球文明と隔絶しているので科学的矛盾を感じない。(打ち上げシーンは周りの住民に見えていないのかは気になったが)
もうひとつ重要なのは異星文明とAIとの接触で、過去のファーストコンタクトで人工衛星SH3搭載AIと意思疎通したことが相互に影響を及ぼす。
特に地球のAIの側に、「AIが秘密を持つ」という伏線を生じさせ、それが現在の物語に繋がるのはうまいと思った(SH3のAIはその後普及する人間をサポートするロボット、オートボットのAIの基礎になる)。ラスト、主人公家のオートボットが初期化を自ら拒否してロケットと共に旅立つのは胸熱だった。(文脈は違うが未知との遭遇を思い起こした)
ストーリーについては、親世代の現在での行動(の説明)が弱い(母が接触禁止したのがうやむやとか)、いじめ的描写は必要だったのか(姉が救われない)など、もう少し整理してもよかったかと感じた。
追記:2周目。前記の感想とほぼ変わらないが、親世代の3人も過去の出来事に葛藤しつつ、最後は子供たちの行動に自らの想いを重ねることにしたのだろう。(詳述しないのは主人公の子供目線からストーリーの軸をぶらさないためか)
営業的には苦戦とのことだが、多くの人に知られてほしい。
あとナナコ(オートボット)はかわいい。絵文字のような表情しかないのだが感情がよく伝わってきて素晴らしい。