「老いへの恐怖、生への執着。」X エックス ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
老いへの恐怖、生への執着。
続編であるパールを先に見てからの鑑賞。
時系列順に見た事で、本作Xの伏線やキャラクター造形を深く楽しむ事ができた。
まず冒頭のショットからして見事だ。
往年のタランティーノ作品を思わせる演出が多いのも非常に好み。
それでいて、本作独自の要素として「映画語り」があるのも良い。
ポルノ映画を撮影に行く…というプロットを活かした映画論は見事だ。
そこから徐々に「悪魔のいけにえ」的な展開に移行していく。
映像面も良い意味でザラついていて荒々しく、それでいて唐突にドローンによる俯瞰ショットを入れるバランスも上手い。
懐かしくも新しい。
後半のとあるシーン。
返り血が車のヘッドライトにかかり、周囲が赤く照らさせるあの演出は本当に神がかっていた。
こういう演出が一つあるだけで、映画はグッと面白くなる。本作はそんな演出に満ちていた。
ジャンルとしては狂老婆モノ…とでも言えば良いのだろうか?
シャマランの「ヴィジット」などにも近い印象だが、本作は老婆側…、もっと言うとシリアルキラーの老夫婦側にしっかりフォーカスしているのが興味深い。
老夫婦の苦悩やコンプレックス、若者を見ての生への渇望。
これらが丁寧に描かれるからこそ、本作独自の展開がいくつも生まれてくる。
ここは好みが割れる所だろうが、私は非常に味わい深く楽しんでしまった。
一見するとB級ホラー映画のパロディに見えるが、その奥には現代に通ずるテーマと映画産業そのものへの問いかけが潜んでいる。
映画好きほど楽しめてしまう名作。
オススメ。