「中年男の哀しき稚拙さが浮き彫りになる。」不都合な理想の夫婦 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
中年男の哀しき稚拙さが浮き彫りになる。
「リプリー」(1999)でアカデミー助演男優賞、「コールド マウンテン」(2003)で同主演男優賞の候補となって以降も、インディペンデント系の作品からエンタテインメント大作まで幅広く出演し、イギリスを代表する俳優として活躍。役者として一層あぶらがのってきた感があるジュード・ロウ。
そんなロウが主演した「不都合な理想の夫婦」の夫・ローリー役は、新たなはまり役と言っていいだろう。同作は、虚飾と野望に満ちた“理想の夫婦”が崩壊していく様を極限まで描いた心理ミステリーだ。
理想の夫婦とは、大金を稼ぐとは、家族とはいったい何なのか。幼少期のトラウマもあって虚飾と野望、歪んだ優越感に侵された男にはわかるはずもない。カメラは物陰からとか、通常の画角よりも一歩引いているようなアングルが多く、まるでこの夫婦、家族が崩壊していく過程をのぞき見したように感じ、それが冒頭の違和感だと気づく。「ファンタビ」のダンブルドアを演じるロウとはまた違った、役者としての本領を堪能できる作品で、中年男の哀しき稚拙さを浮き彫りにする。
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