「一方向に突き進むワンシチュエーションものの面白さ。」ボイリング・ポイント 沸騰 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
一方向に突き進むワンシチュエーションものの面白さ。
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ワンシチュエーションものの面白さは確実にある。ひとつの職場で働いていても、それぞれに価値観もスタンスも、時には言語も違っていて、それが一丸となれるとは限らない。エンタメの作り方として、それでもみなの気持ちがひとつになる痛快なクライマックスの作り方もあると思うが、こちらはむしろ主人公のストレスが増大していくばかりである種の悲劇へと向かっていく。いや、ブラックコメディと言ってもいいのかも知れないし、向かう先がわからないジェットコースタームービーと呼んでもいい。
ただ、90分間長回しがどこまで功を奏しているのかは、ちょっとわかりかねるというか、カットを割って密度を高めたほうが、この映画が描いている緊迫感は高まったのはないか。もしくは、いくつかにシーンを分けても面白さが損なわれるわけではなかったのではないかと思ってしまった。
さらにわがままを言えば、退場したキャラクターたちが後半でまた戻ってきてもいいし、もっと伏線と伏線がひとつに集約されていく脚本でもいいんじゃないかと思うが、いなくなったまま、回収しないままというのも、一方向に時間が流れていくという意味で正しい選択肢だったのだとも思う。
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