「タイトルなし(ネタバレ)」ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
ブリュッセルのアパートに暮らすシングルマザー、ジャンヌ(デルフィーヌ・セイリグ)。
思春期の息子がいる。
ある日の夕方、息子は帰っていない。
夕食の支度をする。
中年の男性の訪問がある。
息子が帰って来る。
夕食をとり、夜の散歩に出かける。
息子用のソファベッドを引き出して、自身はベッドルームで就寝。
翌朝、息子の靴を磨く。
朝食の準備をする。
食べる。
銀行に行き、入金する。
買い物をする・・・
といったところからはじまる、ジャンヌの3日間を描いた物語。
度を越すぐらい丁寧にジャンヌの日常の動作を写す。
カメラはフィックス。
全身が写るフルショットサイズ。
ジャンヌが部屋を行き来する都度、点け消しされる灯りがフェードイン/フェードアウトのような効果を生む。
その反復性。
唯一、点け消ししないで転換するショットがある。
(先のあらすじにも書いたエピソードのひとつ)
それは、物語でいえば伏線。
日常でいえば、逸脱。
2日目の前半は、1日目の延長、日常の延長として描かれる。
が、夕方からの動作に少しずつ異物が混入する。
その異化作用。
それがサスペンスに繋がる。
3日目は、朝から異物の連続。
そのどれがカタストロフに繋がるかとハラハラする。
ただし、いずれも日常の些細なことなので、カタストロフにはまだ遠い。
それに、このズレのような違和感にハラハラしないと、ツマラナイと感じることでしょう。
カタストロフの内容は・・・
映画を見慣れた人には早々に気が付くかもしれません。
個人的には2日目夕方に、
「ははぁん、『ミスター・グッドバーを探して』パターンか、その逆だろうなぁ、異なるなら、それはそれで驚くけど・・・」と思った次第。
でね、悪く言うと、本作、「ワンアイデア映画」と言えなくもない。
そこへ至るまでの日常描写シーンで飽きるひともいるだろうなぁ、と思いました。